「基本」を”対比の関係” で理解しようとするからレベルの低いものと考えてしまいがちですが、”内包の関係” で考えると正しい理解が出来るのです

こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

光風流では毎年夏に「夏季セミナー」を開催しており、チラシが完成したので光風流の各支部にお渡しさせていただきました。

今年は「いけばな進化論 古典、新古典から現代花、そして未来へ」の全体テーマの元、夏季セミナーを開催します。そして家元・副家元講義は「基本はいつも美しい」のテーマで、皆さんにお届けさせていただきます。

基本は土台ではなく「核」なのです

いけばなには「基本」と呼ばれるものがあります。もしわかりにくければ「基本」とはすなわち「型」と呼ばれるものだと思っていただいても結構かと思います。
そして一般的に「基本」と聞くと、一番最初に学ぶ事とかレベルの低いものという風に考えている人が多いのですが、実はこれ大間違いなのをご存じでしょうか。

基本は初心者のものとかレベルの低いものと理解されている方は、ステップアップの状態を次の図の様に捉えられているのだと思います。
基本は一番土台となり、その上に変化のステップがあり、そして応用のステップが最上位にあると。

しかし実は、ステップアップの状態は、次の図のようになっています。

基本は一番核として中心にあり、その周辺に変化のステップがあり、そしてその外側に応用のステップがあるのです。
つまり、どんなに上達しても核の部分から離れてしまったり基本と関係が無くなったりすることはありませんし、長く研鑽を積み様々な経験をしていればいるほどこの核となる部分が大きくなるという事なのです。
そして「核(基本)」の部分が大きければ大きいほど、その周りにある変化や応用の部分も必然的に大きくなるという事はお分かりいただけるのではないかと思います

物事を対比させるからおかしくなるのです

人は物事を「対比の関係」で考えようとしがちです。
例えば ”表” の反対が ”裏” 、手の ”ひら” の反対が手の ”甲”、”陰”の反対が”陽”、”初心者” の反対が ”上級者” 、”基本” の反対が ”応用” という様な感じです。
しかしこの考え方は大きな間違いで、
実はそこに「真理」は無いと私は思っています。
ではどういう関係なのかというと、全て内包の関係にあるのです。

表があるという事は裏が必ず存在しており、どちらかが良くてどちらかが悪いという事ではないのです。だって表と思っているほうが反対から見れば裏になるのですから、表には裏の要素が必ず含まれている(内包)という事です。
物事は対比させるからおかしなことになっちゃうのです。内包の関係で考えてゆくと正しい理解をすることが出来るようになるのです。

古典、新古典、現代花、未来の花も内包の関係です

いけばなには古くから伝わってきている「古典」があります。そして新しい感覚で生ける「現代花」と呼ばれるものもあります。
そしてこの古典と現代花は、対比の関係で論じられることが多々ありますが、これも私は内包の関係で考えなければならないと思っています。
つまりこういう事です。

左の図は、時間の経過とともに順番に変わってきているという考え方です。このように考えるから古典と現代花に対比の関係が成立してしまうのです。
現代花に古典からの影響が1mmも無いのなら、そういう事が出来るかもしれません。しかし全く何も影響を受けていないなんてことはあり得ないのですから、右の図の様に、古典がありその古典を元にして新古典が生まれ、古典や新古典の何かしらの影響を受けながら現代花が生まれ、そして未来に影響を及ぼしてゆくという状態こそが正しい理解になるし、それこそが真理に近づく唯一の考え方だと私は思うのです。

今年の光風流夏季セミナーでは、そんな事も光風流の皆様にお伝えしたいなぁと思っています。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。