”いけばな”と聞くと昔からの事を変わらず行なっていると思われがちですが、いけばなが伝統を積み重ねることが出来ているのは常に新しいことに挑戦し続けているからなのです
ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。
各地にある光風流の支部で開催している講習会の指導にあたって頂いている先生方を対象にした勉強の機会「講師研究会」が先日年度末を迎えたので、皆勤賞をお渡しさせていただきました。
皆勤って欠席や遅刻や早退をしなければ良いだけの事なのですが、色んな用事がある中で1年12回休まずに出席するというのは中々出来る事ではありません。愚直に積み重ねる事の意味や価値を、改めて感じる機会になりました。
いけばなは「伝承」を大切にしているだけではない
「いけばな」と聞くとほとんどの方が ”歴史がある” とか ”伝統” とか ”伝承” というイメージを持たれると思います。少し言い方を変えると、 ”古くからの事を今も行なっている” って感じです。
しかし私達がしている ”いけばな” というのは、600年~700年前の事を今もそのまま行なっているのではありません。
どういうことかと言いますと、いけばなは700年弱の歴史があります。そしてその起源は仏教伝来にさかのぼると言われています。そんな中これを聞いた多くの方が先にも書いたようにこう思われているのです。「昔からの事を今も同じように行っている」と。。。
確かに古来から伝わってきている「伝承」は沢山あります。しかし ”いけばな” は、昔の事を今に伝えるという事、すなわち伝承 ”だけ” を行なっているのではないのです。
いけばなの歴史は「挑戦」の歴史です
私は「いけばなはそれぞれの時代の華道家が、日々新しい事に挑戦を行ったからこそ700年弱の歴史を積み重ねる事が出来ている」と思っています。
それはどういう事か一例を挙げますと、例えば200年ほど前にそれまでのいけばな界には存在していなかった新しい形の生け方が考案され発表されました。当然この生け方は今までに無かったものですからその当時は「異端」と言われたり「邪道」と言われたりもしました。しかしその異端で邪道と言われた生け方も、200年という歴史を積み重ねた事によっていつの頃からか「古典」と呼ばれるようになったり、「基本」と言われる様になったりしているのです。
新しい取り組みというものは人間に置き換えて言えば、歩いているのと同じで一歩を踏み出しているという事です。たとえどんなに小さくとも一歩を踏み出し歩みを進めているからこそ、生き残ることができるし進歩進化することができるのです。すなわちいけばなは新しいことに取り組み続けてきたからこそ、700年の歴史を積み重ねることが出来ているという事なのです。
床の間は日本の伝統のように言われていますが、実は。。。
いけばなは「床の間」を背景にして歴史を積み重ねてきました。しかしこの床の間が一般のお家にもれなく設えられるようになったのは、昭和の高度成長時代以降の事です。大正時代以前は裕福なお家にしか床の間なんてありませんでした。もっと時代をさかのぼれば、貴族や武家、お寺や神社くらいにしか床の間は無かったのです。つまり床の間がもれなく全てのお家に設えられていたのは、一時期だけの事なんです。
畳も同じです。畳が庶民の住宅で全ての部屋に敷かれるようになったのは昭和以降の話です。元々は日本の家屋は木の床(ゆか)がスタンダードだったのです。木の床にムシロを敷いたり座布団を置いたりしていたのです。
そんな中、床の間を見なくなったとか畳の部屋が無くなったという事を殊更に取り上げ、日本人は魂を失ってしまったみたいな言われ方をする方がありますが、こういう歴史をちゃんと分析すると、本質が見えてくると思うのです。
時代は常に移り変わり、好みや価値観も変化してゆく
お花を飾る環境は時代とともに変わり続けてきています。だって人の好みや価値観は時代によって移り変わってゆくものなのですから、住宅をはじめとする人々を取り巻く環境も常に移り変わってゆくのが当然の事ですよね。
そして人の好みや価値観や環境が変化してゆくということは、お花を飾ったり楽しんだりするときに求められることもドンドン変化してゆくって事に他ならないって事です。
好むと好まざるとに関わらず、世の中はどんどん変化してゆきます。そんな中で「いけばな」も世の移り変りや変化にあわせて、進歩・進化していかなければ、単なる過去の遺物に成り果ててしまうのです。
私達は常に移り変わってゆかなければなりません。変化することを恐れたり拒んだりするのは、自分の前にある将来へ生き残れる可能性の扉を自ら閉じてしまう事になるのです。
いけばなは時代にあわせて常に変化してきたからこそ今があるのです。だからこそこれからも模索し挑戦し変化し続けなければならないと私は思っています。
内藤正風PROFILE
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平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。
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