令和6年(皇紀2684年)の新春にあたり思った、節目を大切にする考え方と永続性について

新年あけましておめでとうございます。

令和6年の幕が開きました。皆様穏やかな元日をお過ごしのことと存じます。

今年は令和6年、皇紀(こうき)2684年

今年は令和6年であり皇紀(こうき)2684年になります。
皇紀とは日本の建国からの年数を表すもので、神武天皇即位の年から数えたものになります。ちなみに日本の建国は紀元前660年ですので、西暦に+660すれば皇紀になるという事です。

今年は甲辰(きのえ・たつ)

また今年は「甲辰(きのえ・たつ)」の干支(えと)になります。
干支と十二支(じゅうにし)はよく混同されがちですが、私たちが良く言う「子(ね)丑(うし)寅(とら)卯(う)辰(たつ)巳(み)午(うま)未(ひつじ)申(さる)酉(とり)戌(いぬ)亥(い)」は十二支になり、この十二支と十干(じっかん)の組合せからつくられたものが干支になります。
ちなみに今年の「甲辰(きのえ・たつ)」の甲とは、私たちいけばなを行なう者にとって大切な「陰陽五行説」においては木性の陽の性質を持つといわれており、このことから日本では「きのえ(木の兄)」と呼びます。そしてこの甲が持つ意味としては「植物の種がまだ固い殻に覆われた状態」になります。

ところでこの「甲」という文字って、よく目にしませんでしょうか。特に昨年は「アレ」な「ARE」で日本中の皆さんがよく目にされた ”あれ” です。
そう、阪神タイガースの本拠地の「甲子園」です。甲子園は甲(きのえ)子(ね)の年に開場したので、この名前が名づけられているのです。

節目を大切にするというのは、日本人の代表的な考え方です

昨年が良い年だった方も、思うようにならなかった方も、気持ちを切り替えてこの新しい年を歩んでゆきましょう。だって日本には古来より節目を大切にするという生まれ変わりの考え方が根底にあり大切にしているのですから。
ちなみにこの節目を大切にするという考え方で一番象徴的なものに「式年遷宮」が挙げられると思います。
式年遷宮は文字通り、一定の期間ごとに宮を遷すという事で、一番有名なのは伊勢神宮の式年遷宮ではないかと思います。

あるいはお正月も年神様が変わり1年の節目を超えるという事により、新しく生まれ変わっていると言う事が出来るでしょう。
もっと身近なところでは、毎日夜寝るという行為も、翌朝に起きる事により生まれ変わっているという風に捉える事が出来ます。
江戸っ子は宵越しの金は持たない。。なんていうのも、もしかしたら前日と翌日は生まれ変わって別のモノという思考から来ているのかもしれません。

生まれ変わりには永続性の力が宿る

なぜ日本人は生まれ変わりという事をこんなにも大切にしてきているのかというと、生まれ変わることによって未来に向けて永続性を得る事が出来る様になると考えているからです。

例えば先に書いた式年遷宮なども、20年という期間ごとにお社を建て替える事によって、建築のために必要な技術を継承していくことの役割と、祭祀の作法?手法?なども継承してゆく事が出来る様になります。
1年を前の年と新しい年という風に別のモノと考える事によって、前の年に悪い事が度々起こっていたとしても心機一転気持ちを切り替えて臨むことが出来る様になりますし、逆に良い事が続いていてもその事にうぬぼれるのではなく新しい年に気持ちを切り替えて臨むことが出来る様になります。「勝って兜の緒を締めよ」ですね。

親から子、そして孫につながってゆくという事も、人には寿命が必ずありますが世代を重ねてゆく事によって永続を手に入れる事が出来るという事に他なりません。
自分が誰かから学んだ事や積み重ねてきた経験は、しっかりとバトンタッチをして後世の役に立ててゆかなければ、人の成長も進歩もなくなってしまうという事だと思うのです。

物事は続くからこそ価値になる

いけばなにも同じことが言えると思います。先生から学んだ知識や技術を誰にも伝えずに1人占めしているという事は、自分さえ良ければよいという利己主義に他なりません。
なぜならこの行為は、先生からの流れを自分のところで途絶えさせてしまうという事にほかならず、先生への恩返しにもならないどころか後世の人に伝えるという一番大切な役割を放棄しているのですから。

物事は続くことにより価値が生まれます。それは日本が今年皇紀2684年を迎え世界の中でもずば抜けて長い歴史を持っているという事であったり、その歴史の中で色々な文化が生み出されてきたという事であったり、それらが今も営々と続いているという事によって真似の出来ない物になってゆくのです。

今世の中のあらゆるものは、お金を出せば真似することが出来ます。しかしいくらお金があっても手に入れる事が出来ない物があります。それは歴史です。歴史や長い年月の中で積み上げられ磨かれてきたものだけは真似をすることが出来ません。
という事はすなわち、古来からの教えを学び、それを自分なりに創意工夫し、そういう経験やノウハウを後世に伝承してゆくことこそが、人がこの世に生を受けた理由であると共に使命ではないかと思うのです。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。