「以和爲貴(和を以って貴しとなす)」って、単に ”仲良くする事が良い事” という意味では無いと私は思います

こんにちは、内藤正風です。

今日は朝から雨で肌寒い1日になりました。とはいえ半袖Tシャツでゴソゴソしている私が肌寒いなんて言っても言葉に信憑性がないですよね。(笑)

以和為貴(和を以って貴しとなす)

昨日は光風流本部いけばな教室のお稽古日でした。
今年は光風流いけばな展を12月に開催しますので、通常のお稽古の方といけばな展の作品準備の方とがお越しになる中での教室になりました。

そんないけばな展の作品準備でお越しになられた方が「こんなに頑張って作品作りをしているのに・・」という事をおっしゃられたのですが、その時にふと頭に思い浮かんだ言葉があります。
それは「以和為貴(和を以って貴しとなす)」という言葉です。

この言葉は皆さんご存知の様に、聖徳太子が十七条憲法の第一条の一番最初に書かれた言葉として有名です。
そして私ども光風流の流祖も、この言葉を流誌の中で度々取り上げられていたり、掛け軸にして残されていたりしており、大切に考えられていたのだなという事が分かります。

「和を以って貴しとなす」の間違った解釈が多いように思います

ところでこの「和を以って貴しとなす」という言葉ですが、間違った解釈をされている方が結構多いように思うのです。

「和を以って貴しとなす」という言葉は、”仲良くしましょう”と言う風に解釈されがちですが、実はこの解釈では50点。。。。いや、30点にしかならないと思います。

「和」という文字からは「仲良くする」という意味を連想しがちですが、これって実は全く違う解釈だと私は思うのです。
ではここでいう「和」とはどういう事かというと、「1つの方向にお互いを認め合いながら切磋琢磨しながら向かって進んで行く」と言う意味だと私は思っています。

単に「仲良くする事が大切である」という事を言っているのでは無いと思う理由

その理由として孔子の論語の一文を私は挙げたいと思います。
それは「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」です。

聖徳太子が孔子の論語を学んだのは間違いないと思います。何故ならばこの時代の日本のお手本は中国から伝わってきたものでしたし、当時は孔子の論語はバイブル的な扱いをされていたのですからまず間違いないと思います。
そんな孔子の論語の中に先に書いた一文「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」というくだりがあるのです。
”君子”=優れた人物
”和”=協調
”同”=同調・馴れあう・主体性が無い
”小人”=小者・つまらない人物

それぞれの言葉の持つ意味から読み解くと、”優れた人物は確固たる自己をもちながらも協調するが、つまらない人物は慣れ合う事ばかりをして協調をしない”と言う風になります。

この文章から影響を受けた聖徳太子が、「和を以って貴しとなす」の一文において何を意図しているかというと、”単に仲良くしなさい”という事を言いたいのではないということは容易に想像できると思います。

個々の能力や個性、各人の主体性を重んじながら、協調する事の大切さ

すなわちこの一文は、”確固たる自己をもちながらも協調しあい、同じ方向に向かって進んで行くことが一番大切な事である”ということを言われているのだと私は思うのです。

したがって冒頭に書きました「こんなに作品作りを頑張っているのに・・」という事は、頑張るという事はとても大切なことだと思います。
しかしながら私たちが目指している方向には、いけばなを通じた「自己成長」も含まれているのですから、頑っていればそれで良いのではなく、頑張ることによって模索したり試行錯誤をすることを通じて、たとえ半歩でも前に進んでゆくことこそが大切なのではないかと思うのです。

「和」という漢字を見ると、”仲良く”する事とか”同調”する事とか”妥協”する事とかの意味に捉えがちですが、ここで書かれている「和」の持つ意味は実はそうではなく、個々の能力を自ら最大限に育てると共に各人の主体性を重んじながら同じひとつの目標に向かってまい進してゆくこと、と理解するのが正しい解釈ではないでしょうか。

そんな事を思ったので、今日のブログにしてみました。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。