光風忌を開催して改めて思った、今こそ私たち”いけばな”に携わる人間が、身近な人にまず目を向け出来る事をしなければならないということ

こんばんは、内藤正風です。

今日4月19日は、私ども光風流において特別な日になります。
っていっても一般的には「ふ~ん。だから??」って感じで終りですよね(笑)。なので光風流にとっての4月19日って何かについてはこれからお話しさせていただきます。

光風流にとっての4月19日とは

4月19日が何の日なかというと、光風流を創始した内藤光風の命日になります。そして私ども光風流では毎年この4月19日に、流祖と共にこれまで光風流を支えてきてくださった物故指導者をお祀りする日として「光風忌」という催しを開催しています。
一般的にいうところの法事と同じだと思っていただいたらいいと思います。

ただここで勘違いして頂きたくないのは、法事は亡くなった方をお祀りするものですから過去を振り返るためのものと思いがちですが、そうではないということです。
では何かというと、これからの未来のことを語り合う機会なのです。すなわち未来に向けた伝統を考える日なのです。

伝統とは。そして伝承との違い

さてここで考えないといけないのは、伝統と伝承の違いということです。すなわち伝統とは足跡であり、伝承とはリレーのバトンだということです。

光風流は昨年60周年を迎えました。ということは創流した1年目があり、5年目があり、10年目30年そして60年という歴史を積み重ねてきています。それがすなわち伝統です。
一歩一歩あゆみを進めてきて、ある時振り返って自分の目に映った足跡がすなわち伝統なのです。

一方、光風流が創流されたときに制定された基本は、先生からお弟子さんに教えとして伝えられ、そのお弟子さんが指導者になってまたお弟子さんに伝えられて現在に至っています。すなわちこれが伝承なのです。

これまでの歩み(伝統)を振り返り、未来を考えるのが光風忌

これでお分かりいただけますでしょうか。
光風忌というのはこれまでの歩みを振り返り、その学びや経験を踏まえたうえでこれから歩んでゆく未来のことを語り合う機会なのです。
すなわち未来に向けた歩み(これから積み重ねてゆく伝統)を考える日なのです。

だから、昔を懐かしむ日ではないということです。

未来に向けて私たちが果たすべき役割がある

昨年からのコロナ禍で、仕事が思い通りに進まない。。学校に行くことが出来ない。。。お出掛けも出来ない。。。。そんな不安や不満や不自由という「不」にあふれた時代になっています。
そんな「不」ばかりの時代だからこそ、未来に向けて私たちが果たすべき役割があると思っています。

私は人生の中で大きな天変地異を2度経験しました。それは、阪神淡路大震災と東日本大震災です。
特に阪神淡路大震災は身近に起こったことでもあり、一瞬にして生活が変わりました。電話が通じない、道路や電車の線路が分断されて行動が出来ない、必要な日用品が手に入らない。そうなると最初は衣食住と医療が優先事項でした。

そんな中で避難所や仮説住宅などで何とか生きていくことが出来るようになってくると、ストレスから精神的な変調をきたす人が出始めました。
その時にみんなは気付いたのです。人間は物だけでは生きていくことが出来ない。心の癒しやケアが大切なんだと。
そして東日本大震災の時も、同じようになっていたのです。

そんな経験から私は断言できるのです。こんな時だからこそ私たち「いけばな」に携わるものが果たすべき役割があると。

大きな事ではなく身近な人に目を向けましょう

とはいえ「果たすべき役割がある」とかっていうと、何か凄く大きな事や大変な事をしないといけないと誤解をされる方もありますが、私はそんなことは決してないと思っています。
ってか逆に身近な人達にする小さな事こそが本当に大切だと思っています。

「いけばな」と聞くと、しっかりとした器にちゃんとお花を生けないといけないとかって思いがちですが、そうではありません。
身近な人にお花を1本プレゼントして、グラスで良いので挿してもらって食卓に飾って食事をしてもらうだけでお家の食事がいつもと違ってくると思います。お花1本ならば自分がお花を生けた残りでOKですよね。
あるいは自分が生けたお花をスマホで撮影して、SNSとかでお友達とかの目に触れるようにするのもアリだと思います。

今、自分に出来る事って身の回りにいくらでもあるんです。そんな事をチョットでいいから行動に起こすだけで良いのですから。

植物のパワーは人知を超える

植物の持つ力は偉大です。
私はこの地球上で一番進化しているのは、もしかしたら”植物”ではないかと思っています。

だってちょっと考えてみてくださいね。
植物は枝を切り取っても、切り取った枝は水に浸けているとそのまま生き続けます。枝を切り取った根本ももちろん生き続けています。
切り取った枝を土に挿しておくと根っこが出てそのまま生き続けます。こんなことが出来る存在って他にはないですよね。

人間が指を切り落としたらそんなこと出来ないですよね。切り取った指を水に浸けていたら生き続けていますか?切り取った指を水に浸けていたり土に埋めていたら指から腕や体が出てきて生き続けたりもしないですよね。

だからこそ古来より神仏に花を手向けるというのは、そういう人知を超えた存在だったからこそ、畏敬の念をもち相応しい供物だと考えられてきたからに他ならないのです。

人知を超えた存在である植物を素材にする「いけばな」に携わる私たちが、今何かをしなければならないというのは、必然だと思います。
小さなことで良いんです、みんなで何か行動を起こしましょう。
そんなことを改めて思う機会が「光風忌」なのです。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。