世阿弥の書「風姿花伝」から学ぶ、お稽古の指導をさせていただく時に注意しなければならないこと

こんにちは。内藤正風です。
今日、6月6日は「いけばなの日」だという事をご存知ですか?

そんな今日は神戸の教室でお稽古をしています。って言っても6月6日だから教室にしたのではなく、たまたまそうだったってだけなんですけれどね(笑)

 

6月6日は「いけばなの日」です。

古来より「いけばな」をはじめとするお稽古事は、6歳の6月6日からお稽古をはじめると上達すると言われており、この故事に因んで6月6日が「いけばなの日」とされているのです。

この故事ですがどのくらい古くからあるのかと言うと、室町時代の猿楽師、世阿弥(ぜあみ)の書いた伝書「風姿花伝」の中にも登場するくらい古くからの言われている言葉なのです。


風姿花伝

 

風姿花伝からの気付きと学び

この「風姿花伝」の中で世阿弥はこう言っています。

ー原文ー
この芸において、おほかた、七歳をもて初めとす。このころの能の稽古、必ず、そのもの自然とし出だす事に、得たる風体あるべし。舞・働きの間、音曲、もしくは怒れる事などにてもあれ、ふとし出ださんかかりを、うち任せて、心のままにせさすべし。さのみに、よきあしきとは教ふべからず。あまりにいたく諫むれば、童は気を失ひて、能、ものくさくなりたちぬれば、やがて能は止まるなり。

ーざっくり訳文ー
能では、7歳ごろから稽古を始める。この年頃の稽古は、自然にやることの中に風情があるので、稽古でも自然に出てくるものを尊重して、子どもの心の赴むくままにさせたほうが良い。
良い、悪いとか、厳しく怒ったりすると、やる気をなくしてしまう。

この一文って私達いけばなを指導させて頂いている立場の者から見ると、とても大きな意味ある一文なのです。
どういう事かというと、この文章の「能」を「いけばな」に、「子供」を「お稽古をはじめて間が無い人(初心者)」と置き換えて読むことで、初心者の方への指導方法をどのようにするべきかという教えになるのです。

初心者の生徒さんを指導するときの心得

すなわち、最初は生徒さんの自発的な動きを大切にしながら、核心的なポイントだけを提示し方向性を与え、導くのが良いという事です。

先生があまりにも生徒さんに細かな事までグダグダと言って縛りつけると、生徒さんは委縮してしまいます。その結果、お花の楽しさを感じて頂く事すらできなくなってしまいます。
そしてその結果どうなるかというと、お花を楽しく感じる事が出来なければ早々に辞めてしまわれます。あるいは辞めないまでも、先生の顔色をうかがうような生徒さんになってしまったり、先生に頼りっきりになってしまう依存心の強い生徒さんを作るだけで、先生を超えるような生徒さんが育つ事がなくなってしまいます。

「いけばな」は楽しむためにある

いけばなと聞くと「型」とか「きまり」と言う風に連想されがちですが、最初に楽しさを十分に知ってもらい、それから「型」などを学ぶからこそ楽しく続ける事が出来るのです。

続けると言う事が上達の何よりも一番大切な事ですし、「好きこそものの上手なれ」という言葉のとおり、楽しんで続ける事に勝る方法は無いと思います。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。