世の中はどんどん進歩しています。そんな中で「いけばな」も同じように進歩・進化することが出来ているのか?

こんばんは。内藤正風です。

今日は、各地にある光風流の支部において開催している講習会の指導にあたって頂いている先生方を対象にした研究会を開催しました。
この研究会は毎年3月からスタートして2月までを1年として開催しており、今月が年度末という事で皆勤賞をお渡ししました。

皆勤って欠席しなければ良いだけの事なのですが、色んな用事がある中で1年12回休まないというのは中々出来る事ではありません。

いけばなは「伝承」を行ってきているだけではない

今日はこの研究会の年度末の開催という事で、平成29年度を振り返りそして来月からの平成30年度に向けて、私なりの所見をお話させて頂きました。
どんなお話をしたのかなんて事には皆さん興味ないでしょうからここでは書きませんが、その大元にある私の考えは「移り変わってゆく時代の流れにあわせて、”光風流” や ”いけばな” は進化進歩する事が出来ているか?」という事です。

「いけばな」と聞くとほとんどの方が ”歴史がある” とか ”伝統” とか ”伝承” とかって連想されると思います。いうなれば ”古くからの事を今も行っている” って感じでしょうか。
しかしここで声を大にして私が言いたいのは、私達がしている ”いけばな” というのは600年~700年前の事を今も行っているのではない!という事です。

いけばなは700年弱の歴史があります。そしてその起源は仏教伝来にさかのぼると言われています。そんな中これを聞いた多くの方がこう思われているのです。「昔からの事を今も同じように行っている」と。。。
確かに古来から伝わってきている「伝承」は沢山あります。しかし”いけばな”は伝承だけを行うものではないのです。

いけばなの歴史は「挑戦」の歴史です

私は「いけばなはそれぞれの時代の華道家が日々新しい事に挑戦を行ったからこそ700年弱の歴史を積み重ねる事が出来ている」と思っています。
どういう事かというと、例えば200年前にそれまでのいけばな界には存在していなかった新しい形の生け方が考案され発表されたとしましょう。当然この生け方は今までに無かった新しいものとされるでしょう。もしかしたらその生け方が先進的であればあるほど「異端」と言われたり「邪道」と言われたりしたかもしれません。しかしその異端で邪道と言われた生け方も、200年という歴史を積み重ねた事によっていつの間にか「古典」と呼ばれるようになったり「基本」と言われる様になったりしているのです。

床の間は日本の伝統のように言われていますが、実は。。。

いけばなは「床の間」を背景にして歴史を積み重ねてきました。しかしこの床の間が一般のお家にもれなく設えられるようになったのは明治以降の事です。江戸時代以前は裕福なお家にしか床の間なんてありませんでした。もっと時代をさかのぼれば、室町時代以前なんて貴族や武家、お寺や神社くらいにしか床の間はありませんでした。
こんな風に、時代が変われば環境や価値観などマルッきり変わってしまいます。それが良いとか悪いとかという事ではなく、そういうものだという認識が必要だと私は思っています。

いま周りを見渡した時に「床の間」ってありますか?ほとんどないんじゃないかと思います。かりに床の間がお家にあっても、物置部屋になっちゃっていたり開かずの間や使わずの間になっちゃっているのが実情だと思います。
なのにこんな環境の中で床の間のお花をお稽古しても日常生活で役立てて頂く事なんてできないですよね。

時代は常に移り変わり、好みや価値観も変化してゆく

お花を飾る環境は時代とともに変わります。だって住宅に流行があるんだもん。住宅に流行があるというのは、人の好みや価値観が移り変わるんだから当然の事ですよね。そして人の好みや価値観が変化してゆくということは、お花を飾ったり楽しんだりするときに求められることもドンドン変化してゆくって事に他ならないって事です。

好むと好まざるとに関わらず、世の中はどんどん進歩してゆきます。そんな中で「いけばな」も世の移り変りや変化にあわせて、進歩・進化することが出来ていかなければ、単なる過去の遺物に成り果ててしまうのです。

私達は常に移り変わってゆかなければなりません。変化することを恐れたり拒んだりするのは、自分の前にある将来へ生き残れる可能性の扉を自ら閉じてしまう事になるのです。
いけばなは時代にあわせて常に変化してきたからこそ今があるのです。だからこそこれからも模索し挑戦し変化し続けなければならないと私は思います。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。