いけばなが人間力を育てるとともにビジネスにも役立つといわれるゆえんは、「洞察力」が養われることにあります

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

今日は光風流本部いけばな教室のお稽古日で、お越しになられた生徒さん方といけばなのお稽古だけではなく、色々なお話をさせていただいたのですが、その中で「洞察力」という事についてお話しする機会があったので、自分の考えの整理などかねて今日は洞察力についてブログを書きたいと思います。

洞察力とは

そもそも「洞察力」とはどういう意味かというと、「物事や人などを深く観察し、本質を見抜く力」のことです。ちなみに勘違いされやすい言葉に「観察力」があり、こちらは「物事の現象を自然の状態のまま客観的に見ること」という意味なので、どちらかというと観察力とは「表面的な部分を見る」というものになります。

つまり洞察力は、表面的な部分だけではなく内部(内面)までを見る力の事であり、単に見るというよりは「見抜いてゆく力」を意味する言葉になります。

いけばなでは「観察力」と「洞察力」の両方が必要です

いけばなは、自然の植物を素材にして1つの作品を作り上げます。なので自然の植物と向き合うときに必要とされるのは枝ぶりを見立てる観察力と、その植物が持つ素性を見抜く洞察力になります。
まず枝ぶりは、目に映ったそのままです。曲がっていれば曲がっていますし真っすぐならば真っすぐです。その姿をよく見ながら一番魅力的な部分を生かすようにすればよいのです。すなわち「観察力」です。

しかしその一方で、その植物が持つ素性は見ているだけでは分かりません。例えばその枝は曲げる事が出来る素性なのか曲げる事が出来ない素性なのかは、それまでの経験に基づいて判断を行ないます。加えて季節によって同じ植物であっても折れやすさが違ってきたりしますので、枝を手に取ってしならせてみたり、はさみで切るときの触感などに注意したりすることで、その都度判断する必要が出てきます。
つまりこの行動こそが「洞察力」という事が出来ると思います。

ビジネスや日常生活においても役立つ「洞察力」

いけばなは「華道」と古来より呼ばれ、いけばなを学ぶと人を内面から高めるとともに、日常生活やお仕事に役立つヒントやアイデアを沢山得る事が出来るといわれています。
私の周りでも、商店や会社を経営されている方がいけばなのお稽古を通じて、様々な学びを得、その学びをもとにして様々なビジネスシーンで役立てておられます。

いけばなでなぜ洞察力が高まるか

ではなぜいけばなをお稽古すると洞察力が高まるのかを考えてみると、次の理由が挙げられると思います。

1つ目の理由としては、お花を生けるときに「花材をよく見て、どのように扱うのが良いか」を考えますが、この行動の積み重ねが、日頃から物事をよく観察するという行動に良い影響を与えてくれるようになります。

2つ目の理由としては、お花を生けるときに「どうすればもっと良くなるか」という事を考えますが、これはすなわち自分の得意分野だけで終始しないという事とともに、思い込みや主観に縛り付けられないようにしようという思考であり、この事が日頃の思考においても、良い影響を及ぼしてくれているのだと思います。

3つ目の理由としては、いけばなの学びは他の人が生けた作品からもあり、自分のしていることだけではなく周りの事にも興味を持つようになってきます。なので自然と視野が広がり客観的や俯瞰的なものの見方が出来るようになってきます。

そして最後の理由として、上記3つの理由に共通していることでもありますが、深く物事を考えるという習慣が身についてきます。いけばなの作品作りの中では色んなことについて考えます。イメージについて、材料の扱いについて、分からない事は調べたりもします。そういう中で「これはどういうことなのか」「なぜこの事象は起こっているのか」「この決まりは何のためにあるのか」など多くの疑問を持ちます。
疑問を持つことこそが、深い思考、すなわち洞察力の大元に他ならないのです。

目に見えるものは氷山の一角で、本質は見えないところにある

自分の考えが浅く本質を見抜く事が出来ていない事が、人間には多々あります。そして自分の思い込みで見当外れな意見を言ったり行動をしたりすることもあります。
私自身、日ごろの生活の中で、この事の本質は何だろうとよく考えるようにしてはいますが、まだまだ未熟な部分も多々あると思っています。

目に見えるものは氷山の一角であり、本質は目に見えないところに隠れているという事を忘れずに、「洞察力」をもっともっと磨いてゆきたいと思います。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。