時代は常に移り変わっており、「私がお稽古をしていた時と変わりましたね」という言葉は褒め言葉なのです

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

以前にいけばなをお稽古されていた方が展覧会などに久しぶりにお越しくださったら、かなりの高確率で仰られる言葉があります。それは「私がしていた時とは、お花(作品)が変わりましたね」です。ちなみにこれ答えから言うと、変わっていなかったらダメなんです。
今日はこの事について、分析検証してみたいと思います。

スキーやボードでシーズン初めての時には、思う様に身体が動かない

まずお稽古からしばらく遠ざかるとその人の中で何が起こるかというと、2つの事が起こります。1つは知識や技術の後退。そして2つ目に思い込みの発生です。

いけばなでお話すると分かりにくいでしょうから自転車でお話ししたいと思いますが、子供の頃には毎日乗っていた自転車でも、車が移動手段のメインになったりバスや電車が移動手段のメインになったりすると、自転車に乗らなくなりますよね。
そんななか数年ぶりに自転車にまたがり乗ったら、違和感を感じますよね。何かふらつくような感覚であったりあるいは以前と違うような感覚を感じたりします。これこそが知識や技術の後退です。

なぜこんな事が起こるかというと、知識や技術というモノは、学び続けていたり継続しているからこそ成長する事が出来たり現状維持をすることが出来るという特性があるからなのです。いうなればローラースケートを履いて登山をしているようなものなのです。
足を動かしている間は少しずつでも山を登っていたり、少なくともその場にとどまっている事が出来るのですが、足を動かすのをやめた瞬間から坂道をずるずると下って行ってしまう状態になるのです。
スキーやスノーボードも同じ事が起こりますよね。シーズ最初の初滑りの時に思う様に身体が動かないってアレです。

思い込みは、自分に都合よく記憶を書き換えてしまいます

そしてこの暫く離れている時に一番怖いのは、知識や技術の低下だと思いがちですが実は思い込みが生まれるという事なんです。
思い込みというのはタチが悪くて、その人の中で勝手に変換されてしまうのです。そしてこの勝手な変換は100%悪い方に作用し、悪癖という形でその人にこびりついてゆくのです。

子供の頃や若い時の友達と昔話をすると話が食い違ったりした経験てありませんか。人は自分にとって都合が良い様に話を変換し記憶するという特性があります。過ぎてしまえば全て良い思い出になるというアレです。
人の脳は自分にとって嫌な事や都合の悪い事は脳内から消してしまったり変換してしまい、都合の良い事を中心にした物語に書き換えてしまうので、何十年生きていてもしんどくなったり暗くなったりせずに済むようになっているのですね。

人生ならそれでいいのですが、いけばなに関して言うと、思い込みや悪癖はマイナスにしか作用しないので、その人にとっては「負」の作用しか起こらないという事なのです。

時代というタイムラインは常に進み続けている

前段では、しばらくいけばなから離れている方の中で起こっている事について書きましたが、ここではその人の周辺で起こっている事について書きたいと思います。

人間は時代の移り変わりの中で生きています。今年は令和5年です。去年は令和4年でした。5年さかのぼれば平成でした。3年前までのコロナの流行る前と後とでは、世の中話大きく変わっています。つまり好むと好まざるとに関係なく、時代は過ぎ、そして移り変わってゆくものなのです。
流行も同じです。例えば女性の服装やお化粧など、毎年少しずつ変わって行っていますよね。小物の流行りも毎年少しずつ移り変わっています。中には以前にはやっていたものが改めてはやったりします。例えばミニスカートなんかは良い例で、何十年かに1度ずつ流行が来ていますが、スカートの丈が短いという事以外、服の取り合わせや色合いなど毎回全然違いますよね。なので日本で一番最初にミニスカが流行った1960年代の写真を見ると、古臭さを感じるという事になるのです。

いけばなも世の中の影響の中で歴史を積み重ねています。なので、暫くお稽古から遠ざかっている方は、その人自身の感覚はその時のタイムラインで止まってしまっており、いけばなのタイムラインは世の中の移り変わりと同じように進み続けているので、ズレが生まれてしまうという事なのです。

未来に生き残るために必要なことはたった1つ

如何でしょう、つまり逆説的に言うと10年も20年も経過しているのに「私がお稽古していた時と全く変わっていないですね」と言われるという事は、時代に合わせて変化する事が出来ていないですねということであり、あの頃から成長できていないですねという事に他ならないのです。
これ極めて危険なことで、時代遅れになり成長も出来ていないという事は、生き残ってゆく事が出来なくなっちゃうよって事に他ならないのです。

未来に生き残ってゆくために必要な事、それは移り変わる事に他ならないのです。「私がお稽古をしていた時と変わりましたね」という言葉は、ある意味そのバロメータとして見ることができるという事なのです。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。