いけばな展の作品作りから思う、逃げの思考から良い物を生み出すことはできないし、リーダー(幹部)が良いかダメかを明確にしなければ皆を迷わせてしまうということ

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

光風流では毎年流派のいけばな展を開催しており、今年は9月2日(土)3日(日)に開催する事になっています。

今年は私が家元を継承して30年の節目の年になりますので「記念展」として開催し、全ての作品を長老、幹部、中堅、若手の幅広い世代5人が1組になって制作することに致しております。
加えて全ての作品を間口5mの超大作として、日頃目にすることの無い迫力ある作品を展示することに致しております。

複数のメンバーで作品づくりをするときに最初に求められるのは、方向性を明確にするという事です

色々な世代の人が5人で1つの作品を作ろうと思ったら、それだけで大変です。だって5人いれば5通りのしたいことが有り、5通りの好みがあるのですから。
そんな中でしっかりと歩調を合わせて良い作品作りを行なおうと思ったときに不可欠な要素があります。それは幹部のリーダーシップです。

5人がそれぞれに希望やしたい事を好きに言っているのを、すべて取り入れるなんてことは絶対にできません。なのでこの段階で必要なのは、この度のいけばな展で目指している方向性に合致するアイデアを「選択する」という事です。
選択するという事は、誰かの意見を取り入れて他の人の意見を却下するようになりますから、言い難い事なのはわかります。しかしだからと言って方向性をはっきりしなければみんなが迷走し始めてしまいますので、まず一番最初にするべきことは方向性を明確にするという事です。

皆で相談すれば自然と方向性が出てくるなんてことは絶対にありません。だって5人がそれぞれに1つづつアイデアを出し、そのアイデアの1つ1つが良いものだったとしましょう。けれどその中で最善のアイデアは1つしかないのですから。
その決断は、リーダーの立場にある幹部がしなければならないのです。

時間は掛ければよいものではありません

一般的に作品作りにあたっては、時間をかけて色んなことを考え練り上げていったほうが良いものが出来ると言えます。
しかしながらいけばな展の作品作りには〆切が存在しています。つまりいけばな展の当日までに作品を仕上げておかなければならないのです。
という事は、いけばな展の直前まで構想を練っていたのでは、器や花材など必要なものを調達する時間が足りなくなってしまいますし、作品の下生けをして完成度を高めてゆく事も出来なくなってしまいます。

時間は掛ければよいという事ではなく、必要な時に必要なところに時間を適切に掛ける事こそが必要なのです。

逃げの思考から良い作品を生み出すことはできません

アイデアを形にするためには、乗り越えなければならない壁がいくつも出てきます。そんな時に「簡単な方法で何とかならないか」という逃げの思考では、良い作品を作り上げる事は絶対にできません。魅力的なモノや面白いモノは、必ず見えないところで手間がかかっているのです。

いけばなの世界には古来より「花は足で生けろ」という言葉が伝わっています。これは良い作品を生けたければ、良い材料を探すための労力を惜しんではいけないという事です。
そしてこの材料という言葉には、花材だけではなく花器や敷板なども含まれているのは言うまでもなく、もっと言うならば、良いアイデアを生み出すためにはそのために必要な労力、すなわち日頃から自分へのインプットを行なってはいけないという事でもあると思います。

リーダー(幹部)は、良いかダメかを明確にしなければ、皆を迷わせてしまいます

人は嫌われ事は言いたくないですよね。しかしながら責任ある立場にある人は、良いものは良い、駄目なものは駄目とハッキリとしなければ皆さんを迷わせてしまう結果になります。

例えば味噌汁を作っている時に「冷蔵庫に釣りたてのウナギがあるから入れましょう」と言われても、そこで生のウナギを味噌汁に入れても生臭くて食べる事が出来ない味噌汁になってしまいます。なのでここでは「そのうなぎは良い品ですが、今は使う事が出来ませんので別の機会に使いましょう」という判断をし結論しなければならないのです。
あるいはカレーを作って食べようとしている時に、「綺麗な小皿が有るのでこれに入れて食べましょう」と言われても、小皿ではカレーを1人前入れると溢れてテーブルを汚してしまいますよね。どんなに綺麗な器であっても必要な大きさや必要な用途のものでなければ、料理を生かす事が出来なくなってしまいます。なのでここでは「その器は綺麗ですが、今は使う事が出来ませんので別の機会に使ってくださいね」と言わなければならないのです。
相手が誰であろうと良い事は良い、駄目なものを駄目という勇気は、逆に皆さんへの愛に他ならないのです。

今日のブログは、光風流いけばな展の各席の幹部の皆さんへの業務連絡になっちゃいましたね。けれどこれって実は、家庭でも職場でも同じことが言えるのではないでしょうか。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。