お盆には仏様に「菊」を飾りますが、「菊は仏さんの花だから普段は生けてはいけない」というのは大きな間違いです
こんにちは、内藤正風です。
今日は本部いけばな教室でお稽古を行ないながら、生徒さんの居られない隙間時間にブログを書いています。
いよいよお盆が近づいてきました
昨日8月7日は、二十四節気の「立秋」であると共に七日盆(なのかぼん)でもありました。七日盆は8月15日のお盆に向けて、お墓や仏壇の掃除をして準備に入る日と言われています。
そんな中、お盆といえば仏前のお花には「菊」を飾られる方が多いと思います。
先日この菊について、「菊は葬式あるいは仏前の花なので、普段は生けたらいけないですか」とお問い合わせがあり、「そんなこと全くないですよ」ってお返事させていただきました。
そして「菊」を仏前に手向けるのは、全く真逆の理由だという事もお話しさせていただきましたので、今日はブログでもご紹介させて頂こうと思います。
「菊」を仏前に供える理由
なぜ「菊」を仏前に供えるかと言うと、菊と言うのは、花の中では一番格式高いものと古来より考えられています。
なので、仏様に敬意を払い、お花の中で一番格式高い「菊」をお供えするようになったのです。
決して ”不浄の物” だからとかではないのです。
ちなみに「菊」が一番格式高い花だと考えられている一番わかりやすい事例をご紹介しましょう。
それは、天皇家のご紋です。
宮家にはそれぞれご紋があります。
このなかで天皇家のご紋は「菊」のご紋、正式には「十六八重表菊」がその紋章です。
天皇家のご紋になるくらいですから、格式高くおめでたいものと言う事は容易に想像していただく事が出来ると思います。
すなわち、お葬式や仏壇など仏前に菊をお供えするというのは、仏様をとても大切に考えると共に最高の敬意を表していますよという事に他ならないのです。
決して不浄なものだから仏様にお供えしているわけではありません。
「菊」が特別な存在として考えられている理由
またそのほかに、菊は古来より解熱、解毒、鎮痛、消炎薬の効果がある漢方としても私達の身近な存在なのです。
スーパーやお魚屋さんでお刺身を買われたら、刺身のつまとして大根やワサビや菊が添えられていますよね。
あれは見た目が綺麗と言うだけではなく、殺菌作用が有るから添えられているのです。
ちなみに大根役者っていう言葉がありますが、あれは大根を食べると食あたりをしないって言うことから「売れない役者」=「当たらない役者」ってことで呼ばれるようになったそうです。
他にも9月9日の重陽の節句には、お酒に菊を浮かべて「菊酒」として飲むとか、古くから菊は食用にされたり薬として扱われてきているのです。
という事で「菊」は仏さんの花だから、普段は生けてはいけないなんていうのは大きな間違いなんです。
菊は花の中で一番格式高くおめでたい存在であるとともに、私たちの生活にとって漢方として大いに役立つ存在でもあるのです。
内藤正風PROFILE
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平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。