「伝承」と「伝統」は全く違う事であり、両輪と考えれば悩みや迷いは無くなります。

こんばんは。
いけばなの光風流家元 内藤正風です。

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今日あるところで「伝承」と「伝統」と言う事についてお話をする事がありました。
これって結構混同されていたり、間違って理解されていたりする方が多いんです。
この二つって全く関係ない方も有るのですが、親の後をついで会社やお店を引き継がれたような立場の方には結構重要な事だったりするんです。

実は私もこの事が腑に落ちるまでは、結構悩んだり迷ったりしました。

「伝承」とはリレーのバトンと同じです。

伝承をググってみると、

古くからの(制度・風習・信仰・言い伝えなどの)しきたりを、受けついで伝えて行くこと。また、その伝えられた事柄。

と出てきます。

すなわち、昔からの教えと言うバトンや、しきたりと言うバトンなどを先代(多くの場合は親になるのですが)から受け取って、次の代(多くの場合は子供に)伝えてゆくと言うこと。

これが伝承なのです。

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例えばノウハウを例に挙げると、初代が経験し蓄積したノウハウを二代が受け継ぎ、二代は初代のノウハウに自分の経験に基づくノウハウを加えたり初代のノウハウに磨きをかけたりして三代が受け継ぎ、と言うようにしてゆくって事が「伝承」なんです。

要するに先に書いたように、正しく伝えてゆく伝言ゲームみたいなもんなのです。

「伝統」は、泥のついた足で走って行った子どもの足跡と同じです

伝統をググると

昔からうけ伝えて来た、有形・無形の風習・しきたり・傾向・様式。特に、その精神的な面。

と出てきます。

すなわち、自分が行っている事に毎日愚直に向き合い、試行錯誤をしながら行ってきたことが積み重なり一つの足跡となったのが伝統なのです。

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。。。。。
チョットわかりにくいですね。

世の中は日々移り変わっています。
時代の流れ、これはいうなれば流行というもので、人々の好みであったり住宅環境というものであったり、価値観というものであったりしますが、この時代というものはどんどん移り変わってゆきます。
例えば、スカートの丈の短いものが流行ったり長いものが流行ったり、ちょん髷が普通だったのがそうでなくなったり、畳の部屋が減ってフローリングの部屋が多くなったりっていうことです。
こういう移り変りの中でその時代にあわせて何が出来るのか、どうしたら皆さんに喜ばれるかを考えて、新しい事に挑戦し試行錯誤のなかで革新してゆく。これを積み重ねてきたものが「伝統」に他ならないのです。

すなわち新しい事に挑戦し続けてきた足跡が「伝統」なのです。

親から子へ、子から孫へ。

「伝承」が昔からのものをそのまま未来に伝えていくことであるのに対して、「伝統」は同じ技術や材料を使いながらも新しい事に挑戦し革新していくものなのです。

例えば左官さんならば、あなたの体の中にある技術や知識は「伝承」です。
その「伝承」すなわち技術や知識を使って、今の時代に合わせた新しい壁の可能性を模索し続けてゆくのが「伝統」です。

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「伝承」と言う基になるものがあるからこそ、新しい事に挑戦し「伝統」を積み重ねて行く事が出来るのです。
「伝統」を積み重ねてゆくからこそ、「伝承」が増えて大きなものにする事が出来るのです。

「伝承」を軽んじては新しい事に挑戦できる範囲が狭くなります。
「伝統」を軽んじては未来への可能性が無くなります。

「伝承」と「伝統」は、全く違う事です。
しかしどちらも無くてはならない両輪なのです。
この両輪がどちらも回転するから、未来への扉が開かれ道が伸びるのです。

「伝承」と「伝統」が正しく理解できれば、迷いや悩みも無くなるのではないかと思います。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。

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