ミュージカル「えんとつ町のプペル」を見て思った、日本文化の真髄である「見立て」は世界を制するという事

こんにちは、内藤正風です。

先日ミュージカル「えんとつ町のプペル」を見たのですが、この舞台を見ながら、日本文化の特徴の1つである「見立て」は世界を制するなぁと思ったので、今日はそのことについて書きたいと思います。

ものごとは見方や見せ方を変えるだけで全然違って見える

ミュージカル「えんとつ町のプペル」は、東京キネマ倶楽部というミュージカルを開催するための設備が全く整っていない場所を会場に開催されています。
そのおかげで、通常のお芝居やミュージカルの様に場面転換をする設備がほぼ無い状態の中なので、普通のお芝居などで使われている舞台を回転させるとかセリを使うという手法が用いる事が出来ません。
しかしその代わりに暗転やライトの当て方というような原始的な手法を用いて、見ている人が勝手にその景色を連想するような舞台の使い方をされていました。

通常なら不便で使えないとか使いにくい会場という事になるのですが、その環境を逆手に取ることによって大きくはない劇場なのに広がりを感じたり高さを感じたりする舞台になっていたのです。

見方を変えるだけで物事は違ってくる

今の時期は日に日に明るい時間が短くなってゆきます。そんな中、日が短くなるというと何か寂しい気がして悪いことのように思いがちですが、見方を変えれば日常生活の中で朝焼けを見る機会が増えると言うことにもなります。
なぜならば、朝焼けを夏に見ようと思ったら4時台に起きないと見れないですよね。そんなの普段の生活をしていて私は無理です。

ものごとは見方を変えるだけで全然違って見えてきます。
ここでいう”見方を変える”と言うのは、「見る視点を変える」という事と、「見たものの受け取り方(解釈)を変える」ということになり、先に書いた舞台では「見せ方を変える」になり、実はこれって”いけばな”でも用いる手法の「見立て」と同じ事なのです。

日本文化の特徴であり、いけばなに不可欠な「見立て」

いけばなは生(なま)の植物を素材として作品を作ります。植物には農家で作られたものであろうと自然の中で採取してきたものであろうと、その枝振りは2本として同じものはありません。全て違います。
この枝振りを生かすための第一歩が「見立て」という作業になるのです。

枝振りを生かすと一言で言っていますが、それはすなわち、材料が持つ特徴的なところを見出して活かす扱いを施すという事になります。
特徴的な材料の良い所というのは見る人によって変わります。すなわちAさんが思う良い所とBさんが思う良い所は違っているのが普通ということです。

見立てる力は使い手の力量次第

ではなぜ人によって見立てが違ってくるのかというと、見る人の経験や力量によって見立てる力が変わってくるからです。
経験が豊富で力のある人ほど許容範囲が広く、より特徴的なところを生かすことが出来ます。よく”尖っている”という表現をされる場合がありますが、尖ってればいるほど特徴的なんです。
この尖り方が激しいほど、その部分を生かすためには使い手側の力量が必要になってくるということです。
その意味で言うと、これはもう植物を生かすと言うことも人を生かすと言うことも同じだと私は思っています。

そしてこの見立てには、先に書いた特徴を生かすという側面のほかに、特徴を他のものになぞらえるという側面があります。
他のものになぞらえるとは、たとえば丸いお饅頭をお月様になぞらえたり、お庭の枯山水で白い砂や小石を水の流れに見立てたりするという事で、これもいけばなでは不可欠な手法になります。
このなぞらえるという手法は
ミュージカル「えんとつ町のプペル」で多用されており、ライトで見えるところと見えないところを作ることによって、見えているところの続きが暗いところにまで広がっていると思わせたりしながら、観手の想像力を掻き立て他のものを連想させるようにされていました。

日本文化の特徴「見立て」は世界を制する

夜が明けるのが遅いので、日が暮れるのが早いので寂しい。。。。。それって一面的な見方ですよね。
舞台の設備が整っていないので。。劇場が小さいので。。。これも一面的な見方です。
枝は曲がっているからそれが特徴になり魅力になるのです。使いこなせないのは使い手側の力量の問題なのです。

今回見たミュージカルの舞台では最初から最後まで「見立て」の手法が随所に用いられ舞台を魅力的にしており、日本文化の「見立て」は世界を制する力があるし、だからこそ私たちは「見立て」を大切にしないといけないという確信を持ちました。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。