いけばなの作品だけに限らず、色々な作品は”上手”だから人の心を打つモノではないと思います

こんにちは。内藤正風です。

今日は春分の日で、お彼岸の中日ですね。
雨が降っているし風も強くて、いやー ”春分” なんて名ばかりで寒い寒いー。(笑)

そんな今日は、神戸の教室のお稽古日で、今週末に兵庫県加東市で開催する「光風流いけばな展」に展示する生徒さんの作品の下生けを行いました。
”下生け” というのは、いけばな展に展示する作品を前もって準備しておくことを言う言葉で、お料理の時に使われる ”下ごしらえ” と同じような意味になります。

いけばな展の会場に展示されている作品は”ぶっつけ本番”で作られているのではありません。

いけばな展で会場に展示されている作品は、全て現地でお花を生けて作品が完成されています。その意味で言うと”ぶっつけ本番”になるのですが、実はいけばな展の作品は、ぶっつけ本番ではないのです。
ええ、全ての作品が前もって準備されているのです。

いけばなの作品は ”生” の植物を素材として作品を作ります。なので事前に構想を練って、その作品に必要な材料を発注しておかなければならないのです。
そしてそれだけではありません。いけばな展の”生け込み”(会場で作品を生ける事)は、時間が限られています。時間はその時時によって、3時間の時、4時間の時、5時間の時などと違っていますが、いくらでも時間をかけられるものではないのです。
なので生け込みをしている時に会場で時間が足りなくて焦ったりしなくていいように、事前にある程度作品を下準備しておいて当日に臨みます。

今日お稽古された方は、いけばな展の作品を4回お稽古されました

今日お稽古された方は、2月28日、3月の7日、14日、そして今日21日の合計4回、いけばな展に展示する作品のお稽古をされています。
一番最初は、今回のいけばな展の作品の全体像を打合せし、2回目には使う器や作品のポイントなどを大雑把に意識しながらお稽古をされました。そして3回目は、自分のイメージを実際に形にしながらお稽古をされ、そして今日は実際にいけばな展の時に使う器と材料を用いて ”下生け” を行ったのです。

今週末の23日に生け込みを行われるのですが、用意万端整って、あとはもう当日を待つばかりという状態になられています。

技術の優れた作品が良い作品ではありません

いけばなの作品ですから上手下手があるのは仕方ないと思います。経験の浅い人は未熟で当り前ですし、長年お稽古されている方は上手に生けられているのが当たり前です。
しかし私は、いけばなの作品は上手下手だけでは判断できないと思っていますし、するべきではないと思っています。それはどういう事かというと、人間が作り上げている作品なのですから、そこに ”心” や ”思い” と言うものが必ずあるからです。

なぜそんな事を私は思うようになったのかというと、幼稚園の子供の ”劇” や ”絵” を見て人は感動するという事を体験してから私はこのように思うようになりました。
幼稚園の子供の ”劇” や ”絵” なんて未熟極まりないです。ムッチャクチャに下手です。なのに子供たちが一生懸命に演じている姿や心を込めて描いた絵は、心打たれるのです。心に響くのです。それは決して自分の子供だからという事ではなく全く知らない子供さんであっても、心が震えるのです。

これって上手だから伝わっているんじゃないですよね。たぶんこの世で一番技術的には下手なのに伝わってきているのです。これって ”心” や ”思い” しか考えられないのです。

上手なだけでは人の心には届かない

上手と下手とを単に比べれば、上手なほうが良いという事になります。しかし私は、どんなに技術的に優れていても、技巧だけに走った小手先だけの作品からは、相手に伝わるモノは何も無いのだろうなと思うのです。
なので少なくとも私は、私の作品をご覧いただいた方には私の思いや意図の何万分の1でも感じて頂きたいと思いますし、思いや意図が伝わらなくともせめて私の ”人となり” だけでも感じて頂く事が出来る作品作りをしたいと思っています。
技術は自分の表現を助けるための単なる道具でしかないのです。

これからも私は全精力を込めて、すべて私の分身だと思える作品を作り続けてゆきたいと思います。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。