様式って「型」や「手順」を覚えるものではなく、本質を学ぶものです

こんばんは。
いけばなの光風流家元 内藤正風です。

昨日開催した「夏季セミナー」では、花手前を取り上げました。

講義するだけではなく、少人数のクラスに分かれて、受講された皆さんに「花手前」を実際に行って頂き、理解を深めていただきました。

 

「花手前」とは何か

「花手前」とは、お花を生ける一連の手順や流れを、古来より定められている1つの”様式”にしたがって行う事を言います。
”様式”と言うくらいですから、この一連の所作を美しく見えるように行うと言う事も大切なポイントでもあります。

ココまで聞くと「あぁ~デモンストレーションね!!」って思われる人もあるでしょうが、厳密にはデモンストレーションとはチョッと違うのです。

デモンストレーションとは

デモンストレーションの意味を調べると次のように出てきます。

1 抗議や要求の主張を掲げて集会や行進を行い、団結の威力を示すこと。示威運動。デモ。
2 宣伝のために実演すること。
3 競技大会で、正式の競技種目以外に公開される競技・演技。公開演技。

言葉の意味で言うならば、いけばなで「デモンストレーション」は、”2”の実演って言うことになります。

確かに人前でお花を生けて見てもらうと言う意味では「デモンストレーション」と言う事になるのですが、しかし「花手前」はお花を生けているところをご覧いただくと言う事だけが目的ではないのです。

何故ならばそこに”様式”が定められているからです。

様式とはどういうものか考える

いけばなで言う「様式」とは、その流派において定められた表現形式や、習慣、定められたやり方の事です。
別の言い方では「型」と言うことも出来ます。

この様式とは、とにかく何でもいいから「決まり」を作ってみんながそれに従っているというものではありません。
この「決まり」には、”必ず意味があって定められている”のです。

様式は本質を体現している

昨日夏季セミナーで行った「花手前」には色々な所作がありますが、その一つ一つ全てに意味があります。

例えば手順の最初の部分に、”器に水を入れる”という所作があります。
これは、いけばなでは”器には必ずお水を入れて生けなければならない”と言う教えがあるからです。
なぜ水の入っていない器にお花を生けてはいけないのかというと、お花に対する愛と労りです。

いけばなでは、植物を素材として作品を生けてゆきます。
しかしこの時に私達は、植物を単なる素材として見ているのではなく、同じ「命」のあるものとして畏敬の念をはらい大切に扱う事が大切だと考えているのです。
なので、器には必ず水を張って生けなければならないと考え、それを実践しています。

「花手前」の最初の部分で器に水を入れると言う所作が有るということは、この考え方を体現して表していると言う事です。

また「花手前」の最後の方には”鋏を拭いて片づける”という所作があります。
鋏は単なる道具ですが、たとえ道具と言えどもお花を生ける為に不可欠な存在であり、言うなれば仲間と言う考えから、片づけるにあたっては感謝の気持ちを持って、その気持ちを”鋏を拭いて片づける”という所作で体現しているのです。

様式の持つ意味

単に、決められた手順と捉えるから、押し付けられたように感じたり、小難しいとか堅苦しいとか思っちゃうのだと思います。

一つ一つの所作には全て意味があり、いけばなの本質とも言う事が出来る意味と教えがそこには込められているのです。

様式とは、いらない要素を取り去り、必要不可欠な事柄だけで作り上げられています。
ということは、様式をしっかりと学びその教えを理解する事こそが、一番大切な事を学ぶ事につながるのです。

昨日の夏季セミナーでは、所作の一つ一つについて説明をさせて頂くと共に、その込められた意味についてもお話をさせて頂きました。

皆さんに一つでも多く理解していただく事が出来ていたらいいなぁ!!!

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。