侘び寂びから思う、不完全や欠陥があるのは不出来なのではなく、美の根源が存在しているという事

こんにちは、内藤正風です。

本日無事に「いけばな神戸展」を終えることが出来ました。会期中にお越しくださいました皆様、本当にありがとうございました。

いけばな展の作品は、また改めてご紹介させていただきます。

私にとっていけばなの作品作りは挑戦をする場

いつのころからかは忘れましたが、私にとっていけばな展に出展する作品作りは挑戦する場になっています。

最初は自分の ”したい” を形にする場から始まりました。幼稚園や小学校の頃のいけばなの作品作りは、とにかくしたい事をしていたと思います。
そしてそれが中学生のころには、研鑽を発表する場に感覚が変わっていたように思います。
その後、イメージを形にする場であったり、自分の思う美(面白い・綺麗・内面など)を披露する場であったり、ひたすら作品作りに悶々としていた時代もありました。

その様な中でここ10年以上は、挑戦を楽しむという感覚で作品と向き合っています。
ちなみに挑戦といってもこの言葉にはとても幅広い意味がありますが、私の行なっている挑戦は「未完の完」や「破調による調和」という事です。

日本が世界に誇る、侘び寂び

日本人の感覚や感性の特徴を一言で言い表せるとしたら「侘び」「寂び」ではないかと思います。
私なりに「侘び」と「寂び」を簡単に言うならば、「侘び」とは、簡素なものから優美さを見出し心の充足を得ようとする意識の事を意味し、「寂び」とは、時間の経過により備わってくる奥深さや豊かさの事だと思っています。
(ザックリ過ぎたかな。。(笑))

ちなみに侘び寂びというと茶道の用語のように思っておられる方もありますが、実は日本においては万葉集や日本書紀などの中にも「和備(わび)」という文字で登場するくらい古くからある言葉であり概念なのです。
そして道教や禅の伝来とともに、これらの美の表現方法や価値観としても世に広まっていったのです。

したがって侘び寂びとは ”豪華な美” や ”華美な世界観” とは真逆の存在であり、日本独自の進化をした美的感覚だという事が出来るのです。
すなわちそれは、”未完の完” であり ”破調の調和” の世界なのです。

欧米の絶対神と日本の八百万の神々

ではなぜ日本において侘び寂びが独自の進化を遂げ、「美」の価値観になり、日常生活にまで大きな影響を与えているのかと言うと、そこには日本の八百万の考え方があるからこそだと私は思います。

すなわち欧米は ”一神教” でありその神様は ”絶対神” なのです。完全であり完璧を良しとする考え方という事ですね。
しかしながら日本は古来より全てのものに精霊が宿るという八百万の考え方で国づくりがなされてきており、踊りの得意な神様やお金儲けの得意な神様という様に、神様と言えども長所と短所があり、長所を生かす考え方によって多神教が成立しています。

日本にはこういう考え方が根底にあるからこそ、物事の未完成や不十分な状態に想像力が入り込む余地が生まれそれが魅力や価値になるという侘び寂びに結びつくことが出来たのです。

不完全や欠陥があるのは不出来なのではなく、美の根源が存在しているという事です

綺麗に切り整えられた石ではなく大小の石が積み上げられた石垣の美しさ、凸凹のある庭に生い茂った苔の美しさ、一度割れた器を金や漆でつないだ金継の魅力。
これらって本当に魅力的です。
しかしこれらの大元は、何の役にも立ちそうにない大小さまざまな石であったり、綺麗に整地されていない凸凹な土地だったり、壊れて使い物にならなくなった器なのです。

そこにあるものをそのまま受け入れ、不完全であったり欠陥があるからこそそこに備わっている魅力を引き出したり、あるいは壊れたものを修復することによって他にはない美を生み出すという、不完全や欠陥の中にこそ美しさの根源が存在しているという事なのです。

挑戦をしていると巧く行くときも巧く行かないときもありますが、「未完の完」や「破調による調和」の魅力は本当に楽しいものだと思います。

 

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。