「いけばなは人を育てる」と古来より言われているのは、自然の植物が素材であることによって起こる想定外の出来事に臨機応変に対処することで対応力が身につくからです

おはようございます、内藤正風です。

今日も「いけばな神戸展」の会場の大丸ミュージアム神戸において、開店前に作品の手直しをしています。

いけばなには手直しが不可欠です

いけばな展において「手直し」という作業は不可欠です。なぜならそれは、いけばなが植物という命のある存在を素材としているからです。

命には一瞬として同じ状態はありません。それは植物も動物も同じです。
すなわち植物は毎日変化してゆくという事です。
蕾は刻々と膨らみ、花開き、半開から満開になります。お水は汲み上げて器に入れた瞬間から痛み始めます。
その様な中で作品が成立しているのですから、いけばな展が始まる前に様子を確認し、水を替えたりお花を交換したりしなければならないのは当然のことなのです。

いけばなは常に「想定外」と共存しています

植物は命ある存在である以上そこには「想定外」が常に付きまといます。

朝の手直しに行ったら、お花が沢山痛んでいた。水を吸ってしまって無くなっていた。傷んでいるだろうと思っていたら傷んでいなかった。
こんなの日常茶飯事です。

作品を作り上げる生け込みの時も同じです。
イメージとかけ離れた枝ぶりの材料が届いた。想定よりも花が蕾だった、逆に想定よりも花が開いていた。予定していた素材が入らなかった。
こういう事も珍しい事ではありません。

自然の素材、そして命ある素材、そういうものを扱っている以上、想定外の事が起こるのが普通なのです。
すなわち想定外が想定内なのです。

想定外に対応できる唯一の方法は「臨機応変」

想定外の事が起こった時にそれに対応するためにどうすればよいのかというと、その場その場で臨機応変な対応をするという事です。すなわち「応用力」と「知恵」になります。

想定外という事は「思わぬ事態」という事ですよね。すなわちそれは、自分の想像を超えた事態と言い換えることが出来ます。
いけばなで言うと、枝が折れてしまった。花が咲きすぎてしまった。水があがらなかった。というような状態になります。
そんな時に必要なのは、自分の知識や技術を総動員して何とかする力になります。

但しここでいう知識や技術を総動員するというのは単に知識や技術を持ち出すという事ではなく、色々な知識や技術を足し算したり掛け算するという事であり、知識や技術を生かすための知恵や応用する力こそが大切なのです。
いわゆる「臨機応変」という事です。

いけばなは、作者の度量も大きく育ててくれる

この様にいけばなをしていると、臨機応変な知恵の使い方や応用力が高められるのですが、これって実は思考を育てているという事にほかならないのです。
思考とはすなわちその人の行動の基礎となるモノの考え方ですから、これはそのまま日常生活やお仕事に役立つものになります。

想定外の事に慌てない。想定外の事に冷静に対処対応できる。
なのでいけばなをしていると少々の事では動じることが無くなっていくという事にもなります。

古来より「いけばなは人を育てる」と言われている所以の1つが、ここにもあるという事なのです。
是非皆さんもいけばなとしっかりと向き合ってみて、自分を育ててみませんか。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。