コロナ禍で家族の帰省や来客が無いのでお正月のお花を生けないという方がおられますが、こんな時だからこそなおさらお花を生けておかないといけないのです。なぜならお正月のお花は単なるお部屋の装飾ではないからです

こんにちは、内藤正風です。

今日は12月28日ですね。御用納めの方も多い事と思います。と共に、「御用納めなんてないで~、年内いっぱい仕事三昧!」っていう方もおられると思います。
私も教室の開催は今日が最終日となりますが、仕事自体は終わりなどなく、31日の午前中までゴソゴソと出来る事を行なうのが通例となっており、「御用納めって何~?それって美味しいの??」って感じです。
(笑)

お正月のお花が持つ本来の意味は、お部屋の装飾ではありません

お正月のお花というと、ほとんどの方がお部屋の装飾として考えておられるのではないかと思います。
確かにお部屋に松や南天や蘭などが有ると、それだけでとても華やかになりますよね。

しかし装飾としてお部屋のお花を捉えてしまうと、今年の様にコロナ禍で家族の帰省が無いとか来客が無いのでお花は生けなくてもいいか。。。ってなってしまう場合があるのですが、これって大きな間違いで、こんな時だからこそお家にお花をちゃんと生けておかないといけないのです。

そもそも「お正月」とはなにか

そもそもお正月というのは、それぞれのお家に ”歳徳神” をお迎えする神事なのです。あっ、神事と言っても特定の宗教とか宗派とかっていう類いのものではないですよ。

すなわちこの ”歳徳神” と言うのは、日本に古来より伝わっている万物に精霊が宿るという「八百万(やおよろず)」という考え方に基づくもので、地域の氏神様であったり、そのお家のご先祖様であったり、台所の神様やトイレの神様というようなお家に関係する存在の総称としての言葉です。

それぞれのお家に”歳徳神”をお迎えして、来る年が家族全員にとって厄災が無く幸せな1年になるようにお願いをする期間がお正月なのです。

「一夜飾り」はなぜしてはいけないのか

面白いのは、この歳徳神は1年毎の赴任制になっていて、任期は1月1日から12月31日までで、毎年新しい歳徳神が担当をされているのです。
なんかサラリーマンの転勤みたいですね(笑)

この新しい歳徳神が新任として着任なさるのが、12月31日がはじまる0時00分なんです。
なぜ1月1日ではなく12月31日の0時00分に新しい歳徳神が来られるのかというと、前任の歳徳神と後任の歳徳神で引継ぎをするからなんだそうです。
このお家はこんなだよーとか、こういうところ注意が必要だよーって。

なので古来より注連縄とかは、31日に飾る「一夜飾り」はしてはいけないと言われているのです。
新しい歳徳神が来られる12月31日0時00分に注連縄とかをはじめとする準備が出来ていないって事は、新しい神様を迎える事が出来ずに済んでしまっているって事なのですから。
ちなみに29日も、”9” が ”苦” につながるとして、お飾りを付けたりお花を飾ったりしてはいけないと言われている地域もあります。

話しを戻して、そして前任者の歳徳神は12月31日から1月1日になった瞬間に帰ってゆかれるのです。いよいよ新任の歳徳神様の独り立ちって事です。

お正月の”松の内”は、新しい歳徳神様と一体になる期間

会社でもそうですが、新しい人が転勤して来られたらどうしますか?そこに居る人たちと一体感を持てるように歓迎会をしたり、会社の様子をよく見て頂いたりしますよね。
すなわちお正月っていうのは、この新任の歳徳神様と一緒に過ごして仲良くなる(一体になる)期間なのです。

ちなみにそれが一番象徴されているのは、お正月に使う両方が細くなっている”柳箸”です。
この”柳箸”が両方細くなっているのには意味が有って、私達が一口食べる食事は神様も一緒に一口召し上がって頂いているっていう事なのです。
なので言うなれば、お正月っていうのは広い意味での神事と言うことが出来るのです。

こんな時だからこそお花を生けないといけない

こんなふうに歳徳神をお迎えし歳徳神と一体になるにあたって、歳徳神に来て頂く時の目印になる様に立てているのが「門松」です。
そして新しい歳徳神をお迎えするに相応しいように穢れを払っていますよと言う意味を象徴しているのが「注連縄」です。
そして歳徳神が来られた時の依り代となるのが「松を使ったお花」になるのです。

来たる新しい年が素敵な1年になるように希望している人は、初もうでや初日の出を拝みに出掛けられる前に注連縄をつけ、松1本でもいいので門松を立て、お家にお花を生けておくのが何よりも良いかと思います。

綺麗に生けなくていいです。豪華なお花である必要はないです。心を込めて生ければいいのです。
ご家族や会社やお店の従業員の幸せのスタートは、こんな小さなところから始める事が出来るのです。

コロナ禍で、こんな時だからこそ、お花を生けないといけない理由をお分かりいただけましたでしょうか。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。