「花冷え」という言葉から思う、日本人の ”叙情豊かな民族性” と ”情景を表現する感性”

こんばんは、内藤正風です。

4月は新しい年度のスタートの年で、普通ならば新入社、新入学、進級、転勤、移動というような新しい一歩を踏み出す月なのですが、今年は別の意味で記憶に残る。。というよりも歴史に残る”月”というか”年”になりました。

私の好きな言葉「花冷え」

昨日と今日はとても暖かかったですよね。
4月になると日に日に暖かくなってくるので、上着が薄手になったり、上着が不要になったり、中に着る服が半袖になったりして、私の好きな夏に近づいていくのが嬉しくて嬉しくて仕方がないシーズンになります。

そんな4月ですが、上旬には急に寒さが強くなる日があり、こういう日を表現する言葉に「花冷え」というのがありますが、この言葉が私は大好きな日本語の1つなんです。
お洒落だと思いませんか、単に冷えるとか寒の戻りとか言うのではなく「桜の花が咲くころに寒さがもどること」を「花冷え」っていう表現。

日本人の持つ ”叙情豊かな民族性” と ”情景を表現する感性”

「寒い」とか「寒の戻り」とかって言葉でも十分に意味は通じるのです。

しかしそれだけで表現を終わらせるのではなく「花冷え」という言葉を使う事で、この3月下旬から4月上旬にかけての春らしくなってウキウキしてきた時期の寒さを、気温だけではなく人々の心のニュアンスまで含めて表現するだなんて、日本人って本当に叙情豊かな民族だし情景を表現する感性が素晴らしい民族だなぁと思います。

「粋」な言葉が世界一沢山ある国「日本」

私は日本人ほど季節と言うか「自然」に寄り添って歴史を積み重ねてきた民族は、世界中を見渡しても他にはいないと思っています。
「自然」に寄り添うと言うのは、「自然」を敬い、「自然」を畏れ、「自然」と共存してきているという事です。

世界的には不便があったら自然も人間の力でねじ伏せようとします。たとえば大雨が降って橋が流されてしまったら、次にはもっと強固で頑丈な橋を架けようとします。
しかし日本は”沈下橋”や”流れ橋”の様に、偉大な自然の中の一員として共に生きてゆく「共存」という考え方を古来よりしています。

夏暑いのは当たり前なので、すだれの建具や夏用の座布団などでその季節ならではの風情を生活の中で楽しんだり、雨もその季節や降り方によって、霧雨(きりさめ)、時雨(しぐれ)、春雨(はるさめ)、五月雨(さみだれ)、狐の嫁入り、氷雨(ひさめ)などのように、趣きある言葉で呼んだりするっていうのは、日本ならではですよね。

こんなにも叙情豊かで情景を表現する感性が素晴らしいということを、日本人は世界に誇るべきだと思います。
こういう素晴らしい日本をもっともっと皆で大切にするとともに、これからの世に伝えていかないといけないんじゃないでしょうか。
なんて偉そうな事を考えながら、私自身もっと勉強しないといけないなぁって改めて思っています。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。