いけばなだけに限らず何かを学び習得し上達したいときには、「一芸は身を助け、一芸は万芸に通じ、多芸は無芸となる」を心がけるのが大切です
ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。
今日は終日、光風流本部いけばな教室でお稽古三昧でした。先週半ばから「兵庫県いけばな協会展」を開催していた関係から私個人の教室は1週間お休みにしていたので、今日は朝から結構バタバタとしていました。
そんな中、お稽古にお越しになられた先生と、”知らないという事と知るという事” についてお話をする時間があったのですが、その会話の中で「一芸は身を助け、一芸は万芸に通じ、多芸は無芸となる」は真理だなぁと思ったので、今日はそんなことについてブログを書きたいと思います。
「一芸は身を助ける」って聞かれたことありますか
「一芸は身を助ける」という言葉を聞かれたことはありますか?
ちなみに他にも似た言葉があり、世阿弥は「一芸は万芸に通じる」と言い、宮本武蔵は「一道は万芸に通じる」と言う言葉を残しています。
この言葉の意味は、「一つの芸や道を究(きわ)めてゆけば、他の事にも通じるものである」と言う事です。
たとえば宮本武蔵は剣豪として有名なだけではなく、「五倫の書」や「枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず)」など沢山の優れた書画を残しています。
「枯木鳴鵙図」
世阿弥はとても沢山の能楽論を書き残しました。そのなかでも「風姿花伝」は皆さんもよくご存知の「初心忘るべからず」をはじめとして、日頃の会話で使われている言葉も沢山記されています。
そしてこの風姿花伝は単なる能楽論としてではなく、処世術や戦略論として、芸の道に携わる人だけではなく、政治家や企業人などとても多くの人の手引書とされているものでもあります。
このように、ある道で研鑽を積み活躍されている人には、その道だけではなく他の事でも活躍されている方が沢山おられます
身を助ける一芸は、”万芸に通じる” といわれています
自分を助けてくれるほどの一芸とは、1つの事を深く深く掘り下げ探求したものになります。すなわち如何に本質に近づくかという事です。
深く深く掘り下げて学びを得続けていると、そのうちに関連する色々な事柄について学ぶ必要性が出てくるときがやって来ます。これは砂場で穴を掘っているのを思い浮かべて頂くとわかりやすいと思います。
砂場で深さ5センチの穴を掘っている時には穴の直径はそんなに大きなものではありません。まあ手が入る程度の直径があれば深さ5センチの穴は掘ることが出来ます。しかし深さ50センチの穴を掘ろうとしたらどうでしょう。深さが深くなるほど地面の穴は周りの砂が崩れ落ちて直径が広くなっていくますよね。
深く理解するという事は、関連する広さがおのずと広がり備わってくるという事なのです。
そして面白いのは、この時に自分のレベルが高ければ高いほど、そのレベルに合わせたより高度な理解を得る事が出来ると共に、関連する技術や知識の習得が短期間で行う事が出来るようになるという事です。
これこそが、「一芸は万芸に通じる」と言う事なのです。
一芸は万芸に通じますが、”多芸は無芸” と言う戒めを忘れてはなりません
一芸は万芸に通じるという事ならば、「じゃあ最初から色んな事をいっぱい学べば、自分の取り組んでいる道の肥やしになるんだ」と思われる方があるかもしれませんが、これは単なる時間とお金の浪費にしかなりません。
どういう事かと言うと、一つの道についてある程度のレベルまで到達していない人は、その学び方やお稽古の仕方、創意工夫の仕方がまだまだ未熟です。なのに他の事に手を出したら、初めての方と同じように時間をかけないといけなくなってしまいます。
たとえばサーフィンの上手な人は、スケートボードに初めて乗ってもそれなりに乗れてしまいますしすぐに上達をされます。自転車とマニュアルの車に乗れる人は、バイクに初めて乗っても運転することが出来てしまいます。
1つの事に専念し、ある一定以上のレベルに達している人は、自分の中にその人なりの感性と言うか感覚が培われていますので、一を聞いて十を悟り、その事柄の根本を理解したり活用する事が出来るようになるのです。
一芸に秀でると言うことは、多芸に通じていくと言うことです。
そして多芸は無芸と言うのは、中核となる1つの事がある程度以上のレベルになりその領域に達していなければ、他にしている色々な事が全て理解の浅~いものになってしまうという事なのです。
自分にとってメインとなるもの(一芸)にしっかりと軸足を置き、あれもこれもと欲張るのではなく、一芸を突き詰める事こそが、一芸の習得と言う成果から万芸(多芸)に広がりが出来、その習得にも繋げる事が出来るのです。
「一芸は身を助ける。一芸は万芸に通ず。多芸は無芸。」私たちがしっかりと心にとどめなければならない、意味深長な言葉だと思います。
内藤正風PROFILE
-
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。
最新の投稿
- ・内藤正風の視点2024.11.21出来る方法探しの思考を基本とすれば、自分自身のテンションが上がるし人生も楽しくなりますよ
- ・内藤正風の視点2024.11.20人生を豊かにしてくれるのは「体験」であり、いけばなもお花を生ける事を通じてどの様な体験を提供させていただく事が出来るかという事が大切なのです
- いけばな作品2024.11.19心を込めて作り上げた ”いけばな展の作品” を「展覧会に行けないから後で写真で見せてね」と言われると、とても残念な気持ちになります
- いけばな展2024.11.18「兵庫県いけばな展(神戸会場)」は本日が最終日となります。つきましては閉場時間が早くなっていますのでご注意ください