いけばなの ”基礎力向上” と ”筋トレ” は、ひたすら繰り返すことでのみ成長し磨かれてゆくという点がよく似ている

ごきげんよう、こんにちは、こんばんは、内藤正風です。

来月、私共光風流において展覧会形式の勉強会を開催するのですが、その時に展示していただくモデル作品のお稽古がいよいよ佳境に入ってきており、そんな中でいつも思う事があります。
それは 、”いけばなの基礎力” と ”筋トレ” はとてもよく似ているという事です。

基本はレベルの低いものではない

基本と聞くと、初心者のものとかレベルの低いものと思われている方が多いですが、それは大きな間違いだと断言することが出来ます。そしてそれは、これからするお話で全てを証明することが出来ます。

光風流において水盤にお花を生ける「盛花」という様式があり、その中で一番最初にお稽古する「右盛」という生け方があるのですが、この右盛という生け方は「基本中の基本」といっても差し支えない生け方になります。
そんな基本中の基本ですが、初心者が生けられた右盛と、何年かお稽古された方が生けられたものと、指導者の方が生けられたものとでは、全くその出来上がりが全く違ってきます。
つまりここで解るのは、基本=レベルが低いものという事ではなく、基本には「初級の人が習得している基本」「中級の人が習得している基本」「上級の人が習得している基本」の違いがあるからこそ、生け上げた作品に初級中級上級の違いが生まれるという事です。

ではなぜ基本を一番最初に学ぶのかという事ですが、それは、生まれて初めてお花を生けられる方から何十年もお稽古なさっておられる上級者と呼ばれる方まで、全ての段階の方にとって絶対に不可欠である「核心」だからこそ、一番最初に学んでいるという事なのです。

いけばなの基礎力は、ひたすら繰り返すことで磨かれるのです

私は基本とはすなわち「基礎力」だと思っています。基本を一番最初に学び、その理解を深めれば深めるほど、また技術を高めれば高めるほど、その力は大きなものになってゆくのです。

とはいえ、いけばなの基礎力を高めるお稽古は、とても地味だし退屈なものになります。たぶんこれはいけばなだけではなく、すべての事柄に共通することだと思うのです。
スポーツにおいて基礎体力をつけたり、基礎を身体に叩き込むトレーニングなんて、とても地味ですよね。あるいは絵画や書道や陶芸をはじめとして何でもそうなのでしょうが、基礎力をつけるってただひたすら繰り返したり続けたりする作業になります。
なので優れた成績を残しているアスリートの体力が化け物級だったり
、その基本スキルが余人にまねのできないレベルだったりします。あるいは優れた陶芸家は何百個でも同じ形の器を作ることが出来たり、その作業が物凄く手早かったりするというのは、私たちの想像を絶する繰り返しの上に、その優れた基礎力が備わっているからに他ならないのです

私ども光風流において開催している展覧会形式の勉強会では、モデル作品を展示して頂く幹部の皆さんの基礎力を高める機会としても開催いたしておりますので、自分の基礎力を高めるためのお稽古は、とても地味だしとても退屈なものになります。つまりこの機会に目指しているのは、奇麗な作品を作り上げるためのお稽古ではなく、正しく生けるためのお稽古だという事です。

基礎力に「これでよい」はないし、継続しなければ衰退する

先のくだりで、基礎には初級者の理解、中級車の理解、上級者の理解があるという事を書きましたが、これはいうなれば「基礎にはこれで良いというステップはなく、常に今よりも上を目指す事のみが大切になる」という事に外なりません。
私は10年いけばなをしているから。。。私は20年いけばなをしているから。。。なんて言うのは、基礎力に関して言うならば全く意味を成しません。なぜなら基礎力を身に付けるためには、基礎を育てるお稽古をして初めて身につくものだからです。その意味で言いますと、私は筋トレと基礎力って良く似ているなぁと思っています。それはずばり、地道な積み重ねと継続をしなければ衰退してゆくという点です。

筋肉は使わなければ、だんだん衰えてゆきます。トレーニングを続けているからこそ最低でも維持をすることが出来るという事です。これは水泳やランニングでも同じことが言えると思います。以前は2Kmとか3Kmとか泳ぐことが出来ていた人も、泳がずに1年とか2年とかいたら、そのうち1Kmどころか500mも泳げなくなってしまったり、以前は20Kmとか30Kmとか走っていた人も走らずにいたら、1Kmも走ったら息が上がっちゃうようになってしまいますよね。
いけばなも全く同じです。自らのお稽古をしなくなってしまったら、その瞬間から技術や知識は衰退を始めます。これは例外なくすべての人がそうなってしまうのです。

自分をごまかすことはできないし、見る人が見たら全部バレています

1回しか基礎力を高めるお稽古をしなかった人、5回基礎力を高めるお稽古をされた人、10回取り組まれた人、それぞれそのお稽古にあわせた成果が身についています。
これは人と比べて上手とか下手ということではなく、その人自身がどれだけレベルアップしているかという事です。

お稽古ににしっかりと取り組まずにその場しのぎをしようとしている人、多くを語らずにコツコツと地道にお稽古に取り組まれている人、出来ない理由をとにかく語る人、色々な方がおられます。
そんな中で1つはっきりと言えるのは、自分をごまかすことはできないという事。そして、見る人が見たら全部見透かされているということです。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。