「楽しむ」ということを「楽をする」と勘違いされている方が時々おられますが、「楽(らく)」をしたら「楽しさ」にはたどり着くことはできません

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

昨日私のブログで「”いけばな” には十人十色の楽しみ方があり、そのすべてが正解なのです」という事について書いたのですが、楽しむという事についてお話しすると必ず「楽しむ=楽をする」という風に捉える方がおられるので、今日は「楽しむ」ということと「楽をする」という事は全く違う事であるという事について取り上げたいと思います。

「楽(らく)」と「楽しい」は別物です

昨日のBlogの中で「楽しむのが一番」という事を書きましたが、ここで言っている「楽しむ」は「楽をする」という事ではありません。
光風流の先生の中にもこれを勘違いされておられる方がおられ、そういう方に限って「楽しんで」という言葉を多用されているように思います。
またそういう先生に限って、
「お弟子さんにあまり難しい事を言うとお花を楽しんでもらえないので、出来るだけ負担をかけない様にしている・・・」みたいなお考えをお持ちのようで、そう言うお話を聞くたびに"大きな勘違いをされているなあ。。"と感じます。
すなわちその先生の中では「楽しい=しんどい思いをしない(楽をする)」と言うお考えだと思うのですが、楽しいと楽は同じ漢字を使いますがマルッキリ別のことであり、はっきり申し上げて「楽(らく)」の先に「楽しみ」は絶対に生まれてきません。

「楽(らく)」と「楽しみ」とは何か

まず「楽(らく)をする」という事から考えてみたいと思います。例えば毎日寝て過ごしていたらどうでしょうか。まー楽の極みでしょうが、最初の数日はいくらでも寝ている事が出来たり、ゴロゴロぐうたらとする事が出来ると、「の~んびりできて良いなぁ」って思われる事でしょう。
しかし1週間こんな生活をつづけたらどうでしょう。毎日目的もなくグダグダしているのに飽きてきませんか?
グダグダした生活に満足感って感じないですよね。そんな生活が2週間続いたらどうでしょうか?
自分の中で毎日を無意味に過ごしてしまっているっていう ”後ろめたさ” すら感じ始めたりしないでしょうか。
ここに「楽しさ」や「楽しむ」って一切存在していないとおもうのです。

例えを変えて、テレビゲームで考えてみましょう。テレビゲームって、中々その面をクリアできないから、どうしたらクリアできるかという事を考え思考錯誤したり、クリアするのに必要な技術を身につけたり、アイテムを揃えたりして、そうしてクリアするから達成感が有るのですよね。だからこそ満足感を得られるのです。
そんな試行錯誤やスキルを身に着けたり、アイテムを手に入れるのは面倒くさいからもっと楽を出来るように誰かに代わりにテレビゲームをやってもらって、全ての面をクリアしたとして、楽しいでしょうか?

「いけばな」も、こういうRPGのゲームと同じだと思うのです。最初はみんなレベル1からスタートして、お稽古を通じて知識や技術を身に着けたり様々な器や道具を手に入れたりしてレベルアップしてゆくからこそ、楽しさや満足感を得ることができているのではないでしょうか。

経験の無いところに学びは無く、達成感も満足感もない

「いけばな」も「テレビゲーム」も、最初は知識も技術も道具も何も持っていないところから始まります。
最初は基本的な知識や技術を学びます。道具も初歩的な道具をそろえてゆきます。そしてレベル2にステップアップする事が出来るのです。

この時に苦労したらいけないからって言って、先生が代わりにプレイしちゃったらどうなるでしょうか。
基本的な知識や技術は先生が全部やってくださって、生徒さんは横で見ているだけ。必要な道具も先生が持っておられるのを使う。確かにご本人は何もしなくていいですね。
けれどこんな事して、ご本人は満足感や達成感を得られるでしょうか。絶対に無いと思います。
何の経験もせずにレベルアップどころか、学びすら得る事が出来ないと思います。

大変だったり難しかったりしんどかったりするから、楽しいのです

しんどい事や大変な事を避けると言うのは、パッと聞いたら良い事のように思います。
しかしそういう機会を持つことが出来ないと言うのは、ご本人にとっては経験や学びを得る事が出来る貴重な機会を無くしてしまうと言う事にほかならず、そういうしんどさの先にある「達成感」や「満足感」や「楽しさ」というものを、自ら放棄してしまう事でもあると思うのです。

模索して試行錯誤するしんどさや生みの苦しみを避けようと思えばいくらでも避けることはできます。しかしそれでは本当の意味での達成感や満足感を味わう事が出来ません。
光風流でいけばなをお稽古されている皆さん、お稽古や展覧会の作品作りなどそれぞれの方のお稽古の進み具合に応じた課題や体験に真正面からガッツリと向き合い、最後に「あ~楽しい」って仲間と一緒に言える、そんな場にしていただければ私は何よりもうれしいです。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。