賀寿の会に参加しながら思った、良い感性は日常の中で磨かれてゆくという事

こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

昨日は光風流の役員としてご活躍頂いている先生の賀寿のお祝い会を開催しました。準備や進行をして下さった実行委員の先生方のおかげで、とても楽しい時間でした。

「感性」は生まれ持ったものではありません

賀寿の会でお料理や設え、そして接遇などを受けながらふと思ったんです。何を思ったのかというと「感性」という事についてです。

いけばなをしていると「感性」という言葉をよく耳にします。この言葉を私はあまり使わないと思うのですが(自分では使っていないつもり)、いけばなをお稽古されている方や周りの方から、「感性が良いから」というような使われ方で耳にする機会が多いです。
そしてこの言葉を使われている人の大半は、感性=生まれ持ったものという意味合いで話されている事が多いように感じているのですが、私は感性の良しあしは後天的なモノであって、先天的な要素が無いとは言いませんが少ないと思っています。
つまり良い感性は生まれ持ったものではなく、生活の中で積み上げたり磨かれたりしながら備わったものだと考えています。

日常生活の中で培われたものこそが「感性」

例えばテレビや映画でドラマを撮影するときに、お金持ちの部屋を表現するときにはモノをできるだけ減らしたお部屋にし、庶民の部屋を表現するときにはモノを出来るだけ多く配置するそうです。
これ確かにそうだなぁと思うのですが、お金持ちは蔵や倉庫を別に持っているので不要なものはそこに片付けているから部屋に物を置く必要がなく、庶民は住んでいる部屋がイコール物を置く場所でもあるので、部屋に色々なものを置かざるをえなくなるって事なのです。

なのでそんな中それぞれの環境で生まれ育った子供は、片方の子供は部屋に物がない環境で育つのでそういう感覚が身につくでしょうし、もう片方の子供は部屋に色々なものが置かれている環境で育つので、そういう感覚が身についてゆきます。
そしてこういう日常生活の下で培われた感覚こそが「感性」の土台になってゆくのです。

知識や技術は道具であり、その道具をどう生かすかが感性

感性の土台が日常生活で培われるという事は、それはつまり日頃から良いものに触れる機会を増やすことこそが良い感性を育てる事になると私は考えています。
博物館や美術館で一流のものを目にする機会を増やす。食事や宿泊など一流の設えやお料理や接遇に触れる機会を増やす。舞台や映画など良い作品を見る機会を増やす。等々、日頃の生活の中で良いものに触れる機会を増やすことこそが、良いいけばな作品を生み出す一助になると私は思っています。

良いいけばな作品を生み出すためには、いけばなの知識や技術が必要なのは言うまでもありません。しかしいけばなの知識や技術だけでは良い作品を生み出すことは出来ないのです。なぜならそれは、いけばなの知識や技術は道具だからです。
たとえば大工さんはノコギリ1つでも大きなものから小さなものまで色々なものを持たれています。そして作業に応じて色々なノコギリを使い分けられています。つまり1つしかノコギリを持っていない大工さんよりも色々なノコギリを持っている大工さんのほうが仕事の対応できる幅が広いという事であり、いけばなも全く同じことが言えるのです。

では良い道具を持っている大工さんは良い建物を建てる事が出来るかというと、それは違います。今の流行を知っていたり、オシャレな感性を持っていたり、古くからの伝承を知っていたりなどその人の中に良い感性が備わっていて初めて良い建物を生み出すことが出来るのです。

良いいけばな作品を生み出すためには、いけばなのお稽古だけでは足りない

いけばなは単なる造形や芸術ではなく、生活と密接に結びついた中でその歴史を積み重ねてきています。なので花を生けるという事は、その場所をどう彩るかという事でありその機会をどう彩るかという事に他ならないのです。
つまり生け手の感性に大きく左右されるという事に他なりません。

良いいけばな作品を生み出すためには、いけばなのお稽古をしているだけでは足りないという事を改めて感じる機会になりました。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。