特別な日は大層するからこそ価値が生まれるのであり、その事が人生を豊かで楽しいものに出来る秘訣なのです

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

昨日のお昼に、光風流の支部の役員さんとランチをしながら色々なお話をさせて頂いたのですが、その中で支部の周年記念事業について準備をされている事についてお話を伺いながらアドバイスをさせて頂いた、「特別な事柄はその特別さ加減に応じた大層をしなければ、価値が伝わらない」という事について今日は書きたいと思います。

日本に古来からある「ハレ」という考え方

日本には古来「ハレ」と「ケ」という考え方が有ります。「ハレ」とは特別な事、すなわち儀礼や祭や年中行事などの「非日常」の事をさし、「ハレの日」とか「晴れ着」という言葉はここから来ています。そして「ケ」とは特別な日とは逆に日常の事を言います。

人が生きてゆく中で人生を豊かにするためにはメリハリが大切です。すなわち特別な瞬間、すなわち「ハレ」を意識して作る事が大切だということです。

“ハレの日” は意識して作り出すことで生まれる

近年、色々な事を簡素化したり簡略化したりすることが良しとされている風潮がとても強い様に思います。たしかに度の過ぎた華美装飾は意味の無い事だと言えるでしょうが、特別な存在を大切に扱うという事は無くしてはいけないと思うのです。

意識して特別感を作り出す、それにはたとえば ”日の選定” という要素や ”特別な衣装を着る” ということ、あるいは ”特別な儀式や祭礼を行う” 、他にもその時ならではの ”特別な食べ物を頂く” というようなことなどが考えられると思います。
そしてこの特別感が大きければ大きいほど、その催しが大きな節目であるということが伝わり、ハレの日としての価値が大きくなるのです。つまり面倒くさいからと言う理由で、色々な事を簡単にしたり無くしたりしようとすればするほど、ハレではなくしてしまう行為なのです。

特別な日は大層することで生まれるのです

一番わかりやすい例はお正月だと思います。昔はお正月になるとお店はどこも閉まっていました。なので年末にはお正月にお店の閉まっている期間の食べ物を買ってきておく必要がありました。そのために家族総出でお買い物に行くという特別なことが有りました。
お正月は1年で一番大きな節目として、年始のご挨拶に伺ったりお客様がお越しになられたりしていました。なのでお正月には「よそ行きの服」を着るという特別もありました。
そして当時の日本人は、日頃そんなに豪華なメニューを食べていたわけではありませんでしたので、お正月の食べ物がとても豪華で特別な機会でした。こんな風に大層な事をしていたからこそ、お正月が特別な機会として成立していたのだと思います。
そうなんです、特別感は大層にするからこそ、そのように感じることができるのです。

しかし最近は、年末に大掃除もせず、お正月1日からスーパーが開いていたり、年始の挨拶になってうかがう事もなく、そうなればよそ行きの特別な服なんて物も来ませんから、お正月がゴールデンウイークなどと同じ単なる連休扱いになってしまっていますよね。この原因の一つに大層していないからお正月が”ハレ”の機会ではなくなってしまっているという事があげられると思うのです。

特別な機会を価値あるものにするたった一つの方法

いけばなをしていて痛切に感じるのは、お稽古だけをしていると段々面白くなくなっていくという事です。それはお稽古のためのお稽古になってしまい、メリハリも刺激も無くなってしまうからです。
とはいえお稽古がどうでも良いと言っているわけではありません。お稽古は基本として重要な存在です。しかし何の目標もなくお稽古だけをただただ繰り返すのではなく、定期的な作品発表などの機会が重要だと言っているのです。すなわち「ハレ」の機会です。
ハレの場があるからこそ、その時に向けて知識や技術を高める目標とすることが出来たり、節目としてメリハリのあるお稽古ができるようになるのです。

そしてこれは周年という節目も同じことがいえます。面倒くさいから。。手間がかかるから。。。そんなことしなくても。。。。。しない理由はいくらでも作ることが出来ます。しかしその事によって折角のハレを無くしてしまい、自らで価値を下げてしまったりメリハリも節目もない時間を過ごさなければならなくしてしまっているのです。

同じ時間を過ごすのならば、メリハリがあったほうが楽しくないですか。節目は特別な機会になっていたほうが価値があると思いませんか。何でもかんでも簡素化しようとすると、結局は自分自身が楽しくなくなってしまう結果になるのです。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。