「都をどり」を観劇していつも思う、150年前に歌と踊りで構成するレビューを既に行なっている、日本の伝統文化の柔軟性と先進性ということ

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

先日、日本いけばな芸術展の会期中に「都をどり」を光風流の皆さんと一緒に観劇しに行ってきました。

いやぁ、これまでに何度か観に行っていますが、毎回感じることがあります。それは「日本の伝統文化(芸能)は素晴らしい!!!」という事です。

いけばなの作品作りは、作者の人間力が現れる

私は、いけばな作品というのは作者の総合力が現れているものだと思っています。つまり作者が持ついけばなの知識や技術だけではなく、人として持つ知識や経験、人柄、人生までも含めたものであり、その意味で言うと作者の分身であり作者自身がそこに現わされているといっても過言ではないと思うのです。

言い方を変えると、どんな食べ物を食べたことがあるか、どんな環境に居たことがあるか、どんな本を読んだか、誰と関わったことがあるか、何を見たか、何を感じたか、そういう一見するといけばなとは直接関係のなさそうなこと全てが複雑に絡まり合い、そして影響を及ぼし合って現れたものが「いけばな作品」だという事です。

なので私は、いけばなだけお稽古していても良い作品を作れる様にはならないと思っています。

ひとは影響を受けて成長する生き物

では具体的に良い作品を作ることができるようになるためにどうしたらよいのかという事ですが、たった1つの事を心掛ければよいのです。
それは、「良いものに触れる」という事です。

人間は影響を受ける生き物です。つまり良いものが身の回りにあれば、良い感性や感覚を身に着けることができるし、良い刺激を受けることができれば良い成長をすることができるという事なのです。
例えばファストフード店でしか食事をしたことが無い方は、お料理を目で楽しむという感覚は身につかないでしょうし、優れた器を用いて食事をしたことのない方は、なぜその器が優れているのかを理解できるようにはなりません。あるいは一流と呼ばれるお店でお食事をしたことが無ければ、食事をしながらその設えや接遇、そして流れる時間を楽しむという感覚も理解できずに済んでしまうでしょう。
なので良いものに触れ、感じ、学ぶという事こそが、良い影響を受け自己を成長させることができるという事に他ならないのです。

あっ勘違いがあってはいけませんので敢えて書き加えさせていただきますと、贅沢をしろと言っているのではありません。良いものに触れるという事を推奨しているのです。

都をどりは、何度見ても素晴らしい

最初にも書きましたが、都をどりはこれまでに何度か観に行っていますが、毎回感じることがあります。それは、日本の伝統文化(芸能)は、素晴らしいという事です。

都をどりは明治5年(1872年)から始まっています。明治5年というとまだまだ人々は着物が普段着だし、廃刀令が出るまだ前ですので腰には刀を帯刀しており、近代化に向けて日本が走り出したとはいえ、まだまだ江戸時代の匂いが充満していた時代です。そんな時代に京都の芸子さんや舞妓さんが出演するレビューをスタートさせたっていうのは、もの凄いことだと思うのです。
だって日本におけるレビューの代表として皆さんがご存じなのは宝塚歌劇ですよね。この宝塚歌劇の第1回公演は大正3年(1914年)ですので、宝塚歌劇の42年も前に、歌と踊りで舞台を構成する「レビュー」を行ない皆さんを楽しませていたのですから、その先進性や柔軟性は、驚くべきことだと思いますし、日本の伝統的なものが持つ可能性を、改めて感じるのです。

そんな都をどりが152年150回の公演の中で、歴史を積み重ねながら進化し、さらに時代に合わせて変化して、今年の舞台に繋がってきており、見せ方、魅せ方、感じさせ方、それら全てが私たちいけばな人には自己成長の機会として勉強になるとともに参考になるものだと私は思うのです。

日本の伝統文化は古臭いと思われがちですが、日本の伝統的なものほど柔軟で先進性に溢れたものはありません。そんなことを改めて感じる機会になった都をどりの観劇でした。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。