目的を達成するための手法としていけばな展を捉えると、全ての人にとって有益な機会にできるのです

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

昨日は光風流師範の師範披露いけばな展があり、お祝いに伺ってきました。そんな中でこの師範披露という機会を分析し、それぞれの立場によってこの師範披露という機会をどう生かし、自分の人生のプラスにするかという事を、師範披露に出席しながらなんとなく考えたので、今日はそんなことについて書きたいと思います。

いけばな展で作品を展示するのは目的ではなく手法である

これは私のブログをお読みくださっている方や光風流の皆さんには耳タコ(耳にタコ)の話になりますが、今日の話を始めるにあたって大前提として押さえておかなければならない事なので、あえて取り上げたいと思います。

いけばな展と聞くと多くの方が、いけばな作品を展示する機会という風に思います。もちろんいけばな展の意味としてはそれで正しいのですが、いけばな展に携わるすべての方々が”いけばな展はとにかく作品を展示すればよい”という理解をしてしまうと、いけばな展という機会がペランペランの薄いものになってしまううえに単にやらされている感だけになり、得るものよりも負担感のほうが大きくなってしまったりしてしまいます。
そしてこのやらされている感や負担感が大きくなってしまう原因はたった1つです。それはいけばな展を、とにかく作品を展示すればよい場と捉えてしまっている点にあります。

いけばな展では作品展示をします。しかしそれは何かしらの目的を達成するために、いけばな展を開催したり作品を展示しているのです。
つまり「いけばな展で作品を展示するのは目的ではなく手法である」という事なのです。

目的が明確であるほど手法はおのずと決まってきます

いけばな展を開催するときに、そのいけばな展を通じてどんな目標を達成しようとしていますでしょうか。例えば、出瓶者のお友達やご家族に来てほしいと思っての開催ですか。あるいはしばらく休まれているお弟子さん方に来てもらいたいと思っての開催でしょうか。それとも自分がお花をしている事やお弟子さんの募集をしているという事を地元の皆さんに知ってもらいたいと思っての開催でしょうか。

これ、その目的が明確でないと、いけばな展の開催方法全てが変わってきてしまうのです。例えば会場選びが違ってきます。出瓶者の選び方も違ってきます。案内状などをお渡しする相手も違ってきます。
例えば自分がお花をしている事やお弟子さんの募集をしているという事を地元の皆さんに知ってもらいたいと思って開催されているのでしたら、地元で会場を選定するべきですよね。あるいはしばらくお休みされているお弟子さんに来てもらいたいと思っての開催ならば、そういう皆さんが来やすいと思う形にしてゆくべきですよね。

つまり目的が明確であればあるほど何をするべきなのかがはっきりとしてくるので、どうすればよいのかが自ずと見えてくるのです。

師範披露の目的とは

では師範披露の目的とは何かという事ですが、私はこの目的は1つしかないと思っています。それは師範披露という機会を通じて、一緒にお花を楽しむ仲間、つまりお弟子さんの募集を行い、自分の人生と仲間の人生が豊かなものになるようにするという事です。

人の幸せは、良い仲間と巡り合うことによって生まれてきます。それは価値観を共有できる仲間であったり、刺激を与えてくれる存在であったり学びを与えてくれる人であったりします。
そんな良い仲間とのめぐりあわせは、普通はなかなか得られるものではありません。友達は沢山いても親友と呼べる存在は限られてくるのと同じです。しかしいけばなをしていれば、”いけばな”というフイルターを通した人たちと出会うことができるようになるので、それだけ良い仲間に巡り合うことができやすくなるのです。そしてその上にいけばなを通じて定期的に出会い、1つの事柄にともに向き合うことによって絆が深まってゆきますので、家族とは言いませんが親友以上で家族に近いような仲間ができるようになってくるのです。

自分や仲間の人生を幸せでかけがえのないものにすることができるきっかけ、それが師範披露なのです。

師範披露は、それぞれの立場で有益な機会にすることができる

先の件では、師範披露を開催する人(主催者、披露者)という事で書きましたが、今度は、師範披露に関わるそれぞれの立場で考えてみたいと思います。

師範披露をするという事は、披露するご本人をこれまで指導してこられた先生の存在があります。指導してこられた先生は師範披露に際して、ご自身のお弟子さん方にとっていかに記憶に残るとともに役立つ機会にすることが出来るかを考えなければならないと思います。
最近では日頃お祝いの場にお花を生けるという事も家庭では少なくなってきているように思います、そういう中でお祝いの花として相応しい花材を学ぶ機会にしたり、お目出度い花材の取り合わせについて学ぶ機会であったり、あるいはこれまでにお持ちでない器を手に入れるきっかけとしたりというようなことは、普段のいけばな展ではなく師範披露という機会だからこそできる学びの提供かと思います。
あるいは暫くお稽古をお休みなさっている方に、いけばな展を見に来ていただく様にご案内して、お稽古再開のきっかけとすることもできるでしょう。あるいはご自身のお弟子さん方の交流と結束を深める機会にすることもできると思います。

今お稽古をされている皆さんにとっては、師範披露なんてそうそうある機会ではないですので、師範披露という機会にはどういう事をするのか、あるいは普段のいけばな展とはどんなところが違っているのかなどを、実際にその場でしっかりと体験し学んでいただくことができる機会になります。

暫くお稽古をお休みなさっておられた皆さんにとっては、しばらくお休みしていると気軽に連絡がしにくくなったり顔を出すのがなんとなく気まずかったりするかもしれませんが、こういう機会にお顔を出していただき、先生や同じ教室で学ぶ仲間と出会うきっかけとして役立てていただくことができると思います。

目的を達成するための手法としていけばな展を捉えると、全ての人にとって有益な機会になる

師範披露は決して披露される方だけの機会ではありません。師範披露の開催に際して関わっておられるすべての方にとって、有益な機会としていただくことができるのです。
その原点となる考え方は、「いけばな展で作品を展示するのは目的ではなく手法である」という事なのです。

昨日開催された師範披露が、関わられたすべての皆様にとって人生を豊かにする機会とならんことを切に希望しています。

 

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。