「以不変 応万変(不変をもって万変に応ずる)」はいけばなで大切なだけではなく、人生訓として忘れてはならない言葉だと思います

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

光風流本部いけばな教室の堀も、10月に入って滝を止めました。暑いときには水の流れる音はとても気持ちが良いものですが、10月に入ると少し肌寒く感じるようになりますので、来年の暑い時候まではお預けとなります。

いけばなで「基本」を最初に学ぶ理由

以不変 応万変(不変をもって万変に応ずる)という言葉がありますが、この言葉はまさしく「いけばなからの学びそのもの」だなぁと私は思っています。

いけばなはまず基本からお稽古をスタートします。基本とはすなわち「型」と呼ばれるものであったり、「決まり」と呼ばれるものになります。
と、ここまでお話しすると、「型」とか「決まり」とかって堅苦しいし窮屈なので楽しくないって思われる方もあると思います。
確かにお花を器に挿すだけならば「型」も「決まり」も必要ないと思います。しかし上達し大成しようと思ったり、いけばなを通じて得ることができるお仕事や人生に役立つ学びを得ようと思うならば、基本からしっかりと学ぶことこそが一番の近道になるのです。

自己流や我流は上達の妨げになる

自己流や我流は正しい上達や早い上達の妨げになるという事を、私は度々体験をしています。つい昨年にもそういう体験をしました。

昨年の6月に光風流で宮古島に行ったのですが、その中で三線を教えていただきました。私が三線を教えて頂きましたのは宮古民謡保存協会副会長の砂川美佐子さんと仰られる方で、舞台に立って演奏したり歌ったりすることからは一線を引いて後継者の育成と指導に毎日取り組まれており、三線や民謡の世界ではとても有名な先生だと地元の方から教えて頂きました。

体験が始まって最初に砂川先生が仰られたのは、「音で拾わずに譜面で音を出せるように練習しましょう」という事でした。
三線の譜面が特殊で、弦の抑えるところにそれぞれ名称がついており、一番太い弦の開放が「合(あい)」、人差し指で押さえるのが「乙(おつ)」、中指で押さえるのが「老(ろう)」、小指で押さえるのが「下老(げろう)」という風な感じで、三本の弦それぞれに名称がついており、その名称が書かれているのが譜面になります。
そのような中で練習した曲は「チューリップ」だったのですが、耳慣れた曲ですので私は音で拾いすぐに弾けるようになったのですが、これが大きな間違いでした。
ある程度弾けるようになったので三線を弾きながら歌を歌う段階に入ったら、譜面を前に置いていて見ながら弾いても音で拾って練習してしまっていたために、歌を歌いながらでは三線が弾けなくなってしまいグダグダになってしまったのです。

いけばなのお稽古に来られている方にいつも私は、「基本は退屈だし面倒くさいと感じることが多いです。しかし基本を一番最初に学ぶのはレベルが低いからではなく、初歩から上級者まで常に必要になる大切なものだからこそまず最初に学ぶのです。」とお話ししています。
まさに正しく基本を学ぶ大切さを、三線体験を通じて痛感する出来る機会になりました。

以不変 応万変(不変をもって万変に応ずる)

いけばなには様々な挿け方があり、そして基本から変化し応用する方法があります。と、この様に聞くと、いけばなはとても複雑なもののように思われるかもしれませんが、実はお稽古を重ねて沢山の事を知れば知るほど、どんどん集約されてくるのです。
あっ、これは以前に学んだ○○の挿け方と同じルールになっているなとか、基本からこのように変化するという事は、次にはこんな風に応用してゆけばいいのかなという風になってゆきます。
そうなんです。まさに「不変をもって万変に応ずる」そのものなのです。

そしてこの「不変をもって万変に応ずる」は、いけばなの挿け方で理解することが出来るようになると、そのままお仕事や日常生活においてもその思考を出来るようになってきます。
まさに花を生けるという事を通じて人としてのあり様を学ぶ「華道」そのものなのです。

最初は面倒くさくて分かりにくくて面倒でも、不変(基本)を地道に積み重ねしっかりと身に付けることによって、正しく成長し学びを得る事が出来るようになります。逆に言うと、不変(基本)を疎かにしてしまうと、最初は何とかなっても、後々生かすことが出来なくなってしまい、まさに「急がば回れ」のことわざの様になってしまうのです。

「以不変 応万変」忘れてはならない事だと思います。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。