文化を大切にするためには「ハレ」と「ケ」を抜きにしては考える事が出来ませんし、唯一無二であるためには文化こそが不可欠なのです
こんにちは、内藤正風です。
今日は朝から、私ども光風流で発行している流誌「光風たより」に掲載するいけばな作品の写真撮影の立ち合いに行ってきました。
その撮影後の雑談で「文化は1代では根付かないが、1代で失うことはできる」という話をしたので、今日はそのことについて取り上げたいと思います。
文化とは何か
「文化」って色々な機会に使われる言葉ですが、「じゃあ文化って何?」って聞かれると、明確に答える事が出来にくい人が多いのではないでしょうか。
私はその理由は、古くからのモノ、日常的なモノ、人や動物に関連するモノ、社会としてのモノ、新しいモノ、というように範囲が広すぎる事にあるのではないかと思っています。
なのでここで取り上げる文化とは、日本の伝統的なモノや、小規模な集団(地域、企業、学校、家など)、あるいは一般的に教養とか習慣と呼ばれるような事について書いてゆきたいと思います。
文化を考えるときに「ハレ」と「ケ」は抜きにはできない
私は文化を考えるときに、「ハレ」と「ケ」を抜きにしては考えることはできないと思っています。すなわち「ハレ」とは非日常であり、「ケ」とは日常という事です。
そして何か1つの文化を見るときに、その特徴が如実に表れるのが「ハレ」の機会であり象徴的な存在になっていると思います。
たとえば日本に古くから伝わっている八百万(やおよろず)の考え方が象徴的な形になっているもののうちの1つがお正月です。
最近ではお正月を簡単に済ます方が増えていますが、そのことによってお正月が日常化し「ハレ」の機会ではなくなることによって、お正月の意義や意味が正しく子孫に伝える事が出来なくなっているように思います。
すなわち「ケ」としての日常ではなく、非日常としての「ハレ」の機会が、文化を伝承する節目としての機会になっているという事が出来ると思うのです。
文化を根付かせるには長い年月がかかる
文化を語るうえで忘れてはならないのが「時間」です。
例えば分かりやすい例を挙げるならば、企業の「社風」、学校の「校風」、家の「家風」などは1日ではそんな風に呼ばないですよね。何年というよりも何十年、あるいは何百年という風に積み重ねた時間が長ければ長いほどその文化の裏付けであり重みになってきます。
すなわち文化とは、時間の積み重ねによって定着し習慣化してゆく存在であるという事でもあるのです。
なので何か新しい文化を根付かせようと思うと、とにかく長いスパンで考える必要があるという事です。
文化を無くすのはとても簡単です
しかしその反対に文化を無くすのはとても簡単で、「や~めた」でどんなに長い歴史のある文化も無くすことが出来てしまいます。
すなわち、文化は一夜にして無くすことはできますが、文化を作り上げるためには長い時間が必要になるという事です。例えば家風は二代以上続いて初めて「我が家の家風です」といえるものになるように、時間の積み重ねがあってはじめて文化として成立するようになるのです。
時間の積み重ねは、お金を出しても手に入れる事は出来ない
文化の価値って何か分かりますか。それはいくらお金を摘んでも手に入れる事が出来ない、時間の経過によって積み上げられたものです。
たとえば日本には世界に誇る技術が沢山あります。しかしこれらは研究費や人件費などお金を積み上げる事によって、いくらでも奪い取ることが出来ます。あるいは知識や技術を盗み取ることもできます。
しかし日本の2000年以上の時間を積み上げたことによって培われている文化は、いくらお金を積み上げても奪い取ることはできませんし、盗み取ることは出来ないのです。
なので、この世で唯一奪ったり盗んだり真似したりすることができない存在があるとしたら、それは文化なのです。
文化を大切にすること、それはすなわち、唯一無二であり続ける事が出来るという事にほかならないのです。
内藤正風PROFILE
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平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。