長楽館でお茶を飲みながら思った、古いものに備わる魅力と、古ければ全てが優れているわけではないという事

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

今日は所用で京都に行ったついでに「長楽館」に行ってきました。
長楽館とは明治42年(1909)に “煙草王” と呼ばれた実業家村井吉兵衛により 国内外の賓客をもてなすための迎賓館として建築された建物で、建物だけではなく家具調度品までが京都市有形⽂化財の指定を受けており、現在は、ホテル、カフェ、レストラン、ショップとして使用されているので、お茶を飲みながら空気感を楽しみに行ってきたのです。

お金持ちが作った迎賓館というと、すごく華やかな雰囲気を想像される方もおられるかもしれません。しかしここ長楽館は、華やかなんですが華美ではなく、落ち着いた雰囲気の中でリッチな気分になることが出来る空間になります。
それはそもそもこの建物が、英、⽶、仏、中、⽇の良いとこどりをしながら見事に融和させることが出来ているからこそだと思いますし、100年という歴史を積み重ねる中で熟成されてきているからに他ならないと思うのです。

時代を重ねる事で生まれる魅力と価値

新しいものに備わる魅力や価値があります。そして一方で、古いものに備わる魅力や価値があるのも事実です。例えば私が行なっているいけばなで言うと、「竹器(ちっき)」などはまさにその代表だと思います。
竹を色々な形に切って作られた器の事を「竹器」といいます。この竹器は、制作されてすぐのときの真新しい感じもすごく素敵なものがあります。一方で、制作されてから10年20年と時を重ねると、竹の地肌に色がついてきて独特の風合いが備わってきます。

そんな中で私は、時代を重ねる事で備わってくる魅力には、格別なものがあるように感じるのです。
なぜそのように感じるのかといいますと、新しいものは作れば生み出すことが出来ます。しかしながら10年20年、あるいは100年という時代の中で積み重ね生まれてきた魅力は、一朝一夕に真似できるものではないからです。
先ほどの竹器の例で申し上げますと、私どもには先代の家元から受け継いでいるものもあります。そんな中には私の年齢よりも古くからの器もあります。同じ形の器は注文すれば作ることが出来ます。しかしながら60年経った器を手に入れる事はできません。先代の家元が入手し、随時手入れを行ない、それを私が受け継ぎ、必要に応じて手入れをしたり修復したりしながら今日の日があるのですから

人も長生きしているから魅力が備わるのではない

とはいえ、何でもいいから古くなれば価値が出るのかというとそんなことはありません。それは骨董品を考えていただければわかりやすいかと思います。
古い茶碗だったら何でもかんでも価値があるわけではないですよね。そもそもデザイン的に優れていたり、希少なものであったりという、そのもの自体が良い品物であるという事がその前提にあり、その上に時代という砥石を経て、長い時間を経過して風情や魅力が増しているからこそ、骨董として認められるものになっているのです。

と、そんなことをお茶を飲みながら考えていたのですが、これって人も全く同じことが言えると思うのです。
とにかく年齢を重ねれば、魅力的な人間になることが出来るというわけではありません。どんな人とは違う経験や体験をしてきたのか、どんな喜びや痛みを経験してきたのか、その振り幅が大きければ大きいほど、そして深ければ深いほど、その人の持つ魅力というか人間の輝きになるのではないかと思うのです。

と、そんなことを思っている私自身が、魅力ある年の重ね方が出来ているかどうかは自分自身では分かってはいませんが、少なくともそうなることが出来るように生きてゆきたいなぁと思います。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。