いけばな展を作品展示する機会だと考えてはいけません。いけばな展は作品作りや作品の展示を通じた自己成長の機会に他ならないのです

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

今日は先日開催した「光風流いけばな展」を通じて思った事について、ブログを書きたいと思います。

いけばなの一番の目的は、体験を通じた多様な経験と学びです

いけばなの目的は何かと聞かれたら皆さんは何とお答えになられるでしょうか。お花を綺麗に生ける事が出来るようになること。日本の伝統を学ぶこと。人としてのあり様を学ぶこと。などなど、きっと色々な答え出てくると思います。
そんな中で私が思ういけばなの究極の目的は、「体験を通じた多様な経験と学び」に集約されると思っています。

例えば日ごろのお稽古では、お花の挿け方やそのために必要な知識や技術を学んでいますよね。これはまさに、新しい学びという体験を積み重ねています。
そしていけばなをお稽古していると、日ごろのお稽古だけではなく、講習会や研究会、そしてセミナーというような機会があります。こういう機会は、日ごろの教室では中々お稽古することが出来ない内容や、より高いレベルの内容などを学んでいただき、体験を通じた学びを積み重ねていただいているのです。
あるいはお花を生ける事だけではなく、いけばな展を見に行ったり、色々な場所に行って素晴らしい景色を見たり歴史に触れたりエンタメに触れたり美味しいお料理を食べたり、その土地ならではのものに触れたりすることも、まさにその人の体験を通じたインプットになり、学びになっているのです。

豊かな体験はその人の内面を豊かにしてくれます。内面が豊かな人はいけばなの作品作りにとどまらず、日常生活やお仕事においても魅力ある人として信頼されますし活躍することもできるようになります。
したがっていけばなの一番大切なことは、どれだけ多種多様な体験をすることが出来るのかということだと私は考えています。

いけばな展という機会も、新しい体験をすることが大切なのです

私がいけばなの究極の目的は「体験を通じた多様な経験と学び」であるという考えているのは先に書いた通りですが、これはいけばな展においてもまさにその通りだと思っています。

いけばな展と聞くと、いけばなの作品を展示することが目的だと思われがちですが、私はそんな風には全く考えていません。私が思ういけばな展とは、いけばなの作品作りや展示することを通じてどんな体験をすることが出来るか、そしてどんな学びを得る事が出来るのかという事こそが大切だと考えています。

例えば今年の光風流いけばな展では、すべての作品が間口5mという超大作でした。なのでお家で日ごろ生けているいけばな作品とはまるっきり別物ですし、いけばな展などで大作と呼ばれる間口2mくらいのいけばな作品とも桁違いの大きさになります。
そうなれば当然、日ごろ行っている作品作りの作業とは全く違ってきますし、器などの大きさも全く違ってきます。
そんな中で「作品が大きかったから大変だった」という声も聞きますが、そんなの当然のことです。だってやったことのない未知の領域に足を踏み入れていただいているのですから、わからないことや未経験のことばかりで大変なのに決まっているのですから。
しかしだからこそ、新しい体験をしていただく事が出来るのですし、その経験や学びによって今回の出瓶者の皆様が全員ステップアップしていただく事が出来たのもまぎれもない事実なのです。

未知のことは、不安だし大変です。しかしだからこそ自己成長をすることが出来るのです

人は初めてのことや不得手なことは、避けて通ろうとします。そりゃ当然ですよね。自分の得意な土俵にいたほうが居心地は良いし物事は思い通りに進むのですから。しかしそんなことをしていたら、自分をどんどん劣化させていってしまう結果になるのです。そう、自分が気付かない間にです。

これは筋肉を例に挙げるとわかりやすいかと思います。
毎日の生活の中で筋肉のことなど意識せずに活動していると、人は疲れないようにしんどくないように知らず知らずの間になってゆきます。するとどうなるかというと、筋肉はどんどん衰えていってしまうのです。
逆に筋肉をつけようとしたらどうでしょうか。学生の頃などを思い返していただければわかりやすいと思います。きつい運動をしては筋肉痛になりということを繰り返していた時には、腹筋が固かったりお尻がプリってしたりしていましたよね。
つまり筋肉を育てようと思うと一定の負荷をかける必要があるという事なのです。そう、負荷とはしんどいことに他ならないですし、負荷なくして成長はないのです。

人が老いるというのは、加齢のことではないと私は思っています。だって体力や脳の機能などは一定の年齢を境にして落ちてゆくものなのですから。
では老いとは何かというと、新しいことへの興味や新しいことをやってみようという意欲、これらがなくなった状態こそが老いに他ならないのです。
いけばなの先生には若々しい人が多いとか、元気で長生きされる人が多いといわれるのは、未知のことへの興味、新しい体験を面白がる柔軟さ、自己成長を求める探求心を持ち続けておられるからこそだと思うのです。

いつまでも元気で魅力的に年を重ねるためにも、新しい体験を求め続けてゆきたいですね。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。