人は周りの環境から影響を受ける生き物なので、良い思考や良い行動を身に付けようと思ったら、良い環境に身を置くのが一番の近道です

こんにちは、内藤正風です。

今日は午前中会議を行ない、その中で良い成長という事についてお話をさせて頂いたので、その事についてブログでも取り上げたいと思います。

良いお弟子さんを育てたければ、良い環境を整える

私達いけばな教室を開催している人間は、全ての先生が「良いお弟子さんを育てたい」と思っています。そしてそのために自己の研鑽を続け知識や技術の向上に励んでいます。

しかし最近私は、良いお弟子さんを育てるために必要なのは”指導者の力”ではなく、”周りからの影響”のほうが大きいのではないかと思っています。
すなわち、良い環境を与えれば人は良い成長をするという事です。

この様に書くと勘違いされる方があるといけませんのであえて書き加えておきますが、この話の一番土台は、生徒さんが日ごろお稽古をされている先生の思考や姿勢、そして教室の環境が、良いものであるのが基本だなのは言うまでもない事だという事です。

生徒さんに手をかけすぎる先生や、生徒さんを自分の掌の中で泳がそうとする先生は、自滅する

ショッキングなタイトルですが、これはそういう事例がありハッキリと立証されている事なので、あえてこのようなタイトルにしてみました。

生徒さんに必要以上に手をかけすぎる先生は、生徒さんが育ちません。それは何故なら生徒さんのいけばなの楽しみを奪うと共に生徒さんの成長を先生が阻害してしまっているからです。

支部で開催している講習会に生徒さんを参加させるにあたり、毎回お花を生けるときに使う配り木まで用意している先生。
ハッキリ言います。先生がそんなことをするから、いつまでたっても生徒案は自分で配り木を作ることが出来ないのです。先生が手をかけすぎたせいで生徒さんが成長できていないのです。

展覧会の時には、自分の持っている器を生徒に使わせ、材料も自分の庭にある材料を使わせる先生。
ハッキリ言います。先生がそんなことをするから生徒さんが自分で作品を考える力や機会を奪ってしまっているのです。加えて、先生が気に入っている器や材料を生徒さんが使いたいとは限りません。なんなら生徒さんはもっと違う事をしたいと思っていても、先生に器と材料を出されたら”嫌だ”というのも悪いなぁと思って渋々その器や材料を使う様になり、そんなことが積み重なってゆくから生徒さん自身が楽しくなくなって辞めてしまわれるのです。

そして生徒さんを自分の掌の中で泳がそうとする先生も、生徒さんが育ちません。
日頃のお稽古では先生の好きな生け方しか指導しない先生。いけばな展では先生が思う作品を生徒さんそれぞれに生けさせるようにする。花材は先生が一括して用意し、生徒さんの好みやこんな材料が使ってみたいという気持ちはガン無視。光風流の自分の教室以外の生徒さんやほかの支部の方との交流をさせない。
この先生は、新しい支部を立ち上げるほどに生徒さんを育て活躍されていたのですが、10年後に支部を解散せざるを得ない状況になるまで生徒さんが離れてゆかれてしまいました。

冷静に考えたら分かりますよね。
どちらも生徒さんから「楽しい」と「成長」を奪ってしまっているのです。

生徒さんに良い成長をしてもらいたければ、良い環境を提供することが先生が唯一出来る事です

では生徒さんに良い成長をしてもらいた時にどうしたら良いのかというと、方法はたった1つです。
それは「良い環境を提供して差し上げる」という事です。
そしてこの良い環境とはどういうものかというと、その時に必要な苦労をすることが出来、一緒に苦労をしたり喜んだりできる仲間を手に入れることが出来、良い思考や行動を身に付けることが出来る環境という事です。

学びを得て習得するためには、ある種の苦労は不可欠になります。だって知らない事を学んだり出来ない事を出来る様になろうとするのですから。
なので初級の段階、中級の段階と、それぞれの生徒さんの成長に合わせて、その時に必要な苦労をさせてあげることこそが、生徒さんの成長につながるのです。

そして苦労をした結果、習得したり達成したりすることが出来たときに、苦労を共にできる仲間や一緒に喜びあえる仲間がいるという事は生徒さんにとって一生の宝となり、いけばなの喜びや楽しみをより大きくしてくれます。

良い思考や行動は、良い生徒さんの集まるところで自然に身につくのです

いけばなのお稽古というと先生の教室に通えばそれでよいと思われがちですが、より良い成長を生徒さんにしてもらいたいと思うならば、良い習慣や良い思考のある環境に生徒さんを送り出すことが必要です。

すなわち一教室という小さな世界に生徒さんをとどめておくのではなく、支部講習や家元の講習会を受講したり、あるいは支部や本部の事業に参加するという事を通じて、良い学びを得、良い習慣を身に付け、良い仲間を作るのが一番手っ取り早いという事です。

例えば会社で、自分の周りの環境に文句ばかりを言っている上司に育てられた社員と、今自分の目の前にある環境で最善を尽くし最良の結果を出そうとしている上司に育てられた社員とでは、どちらが有望な社員になってくれる可能性が高いでしょう。
あるいは学校で、勉強をする習慣がなくしんどい事からは逃げる人たちと一緒にいる場合と、勉強を行なう事が習慣となっていてしんどい事であってもしなければならない事はしっかりと行なう人たちと一緒にいる生徒さんは、どちらが将来有望な大人に成長してくれる可能性が高いでしょう。

これと同じで、いけばなにおいてもより良い思考とより良い習慣のある環境に生徒さんを送り出せば、それだけで生徒さんは良い成長をしてくれるようになるのです。
すなわち生徒さんを育てるのは先生ではなく、良い環境にいる周りの人たちという事なのです。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。