完成したと思ってから、もう一度向き合う | いけばなの「手直し」に学ぶ大切なこと

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

いよいよ今日から、大丸ミュージアム神戸において、「兵庫県いけばな展」が始まりました。
昨日は作品の生け込みを行ないましたが、いけばな展では、生け込みを終えたらそれで全てが完成というわけではありません。これから毎日、特に開催前の朝が、とても大切な時間になってまいります。

朝の手直しの熱気も、とても凄いんです。

いけばなの作品は、生け上げた後も変化しています

いけばなは、生の植物を使って作品を作ります。なので、生け上げたときの姿が、そのままずっと続くわけではありません。
例えば、生けてから時間が経つと花が開いてきますし、逆に水が落ちて萎れてしまったりする場合もあります。
つまり、昨日の生け込みの時に「これでよし!」と思って完成させた作品も、一晩経てば同じ姿とは限らず、だからこそ、展覧会の会期中には作品の状態を毎日確認し、必要に応じて手直しを行なわなければならないのです。

これは、生きている植物を素材としている「いけばな」だからこそ必要不可欠なことなのです。

時間を置いて見直すと、昨日とは違うものが見えてきます

そして、手直しが必要になる理由は、植物の変化だけではありません。
昨日はこれで良いと思っていた作品も、一晩経って改めて見てみると、「あれ?この枝はもう少し右の方が良いかなぁ」とか、「この部分は少し整理した方が良いな」と感じることがあります。

こんな事がなぜ起こるのかというと、生け込みの最中というのは、限られた時間の中で作品を仕上げなければなりませんので、最大の集中力を発揮して目の前の作業に意識を集中しています。
なのでテンションも上がりきっていて、いうなれば「私って天才じゃない!」くらいの状態になって作品作りに臨んでいます。

ところが、一晩経って気持ちを新たにして作品を見ると、昨日は気付かなかったことに気付く場合があるのです。ええ、冷静になって見てみたら。。。って事です。
もちろん、前の日に生け上げた作品が、そのままOKという事ももちろんありますから、これはその時によって違ってきます。

ただここで大切なのは、何かを変えることではなく、作品をもう一度見つめ直すことなのです。

手直しは、失敗を直す作業ではありません

と、こんな風に書くと、「手直し」とは、何か失敗したところを修正するような印象を持たれる方もあるかもしれませんが、決してそういう狭義のものではありません。
植物が変化したから整える。あるいは、改めて見直すことで、もっと良くなるところに気付いたから手を加える。どちらも、作品をより良い状態にするためや、今の状態を維持するためのものなのです。
そしてこの他に、手直しにおいて何よりも大切なのは、水を替えたり足したりする事です。

植物は水が無ければ、生きてゆく事が出来ません。なのでその意味でいうと、人間にとっての空気や食事と同じように、植物にとっては水が不可欠なのです。
水が傷みかけていたら、替える。水が傷んでいなくても、減っていたら足す。つまりいけばなとは、水も生けていると言う事が出来るのです。

完成したと思ってから、もう一度向き合う

こうして考えてみると、手直しというのは、いけばなに限った話ではないと思います。
仕事でも、文章でも、何かを一生懸命に作り上げたときには、これで完成と思うものです。けれど、少し時間を置いて改めて見直すことで、もっと良く出来るところに気付くことがあります。
そして、時間の経過によって状況そのものが変わっていることだってあります。昨日は正しかったことが、今日もそのままで良いとは限らない。だからこそ、そのときの状況を見て、必要な手を加えてゆくことが大切なのです。

という事で、今日から始まった「兵庫県いけばな展」。
今日は終日、いけばな展の会場におりますので、皆様のお越しを心よりお待ちいたしております。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。