良かれと思って行なった事が裏目に出るということわざがありますが、花器の貸し借りなどは正にその最たるものだと思います

こんにちは、内藤正風です。

最近、光風流の積み重ねてきたこれまでの歴史って、ある意味データ集めだなぁとつくづく思っています。

良かれと思ってやったことが裏目に出るとか仇となるという言葉がありますが、本当にその通りだと思うことが”いけばな”をしているといくつも有ります。そしてその中の1つに「器の貸し借り」があります。

器や道具の貸し借りには弊害しかない

ショッキングな事ですが結論から言います。それは、先生から器を借りてお稽古したりいけばな展に作品展示していたお弟子さんで、大成した人はいないという事です。
これは光風流のこれまでの歴史の中で、指導者として活躍された(されている)先生で、自分の師匠から器を借りていた人は1人もいないという事実があり、その事を根拠として申し上げています。

ちなみに私は、器の貸し借りには弊害しかないと思っており、その1番の理由は自分の物でないので大切にしないという事です。
これもこれまでに器を貸された先生が言われている言葉がその裏付けとしてわかりやすいと思います。
「組合せの敷板を貸したのだけれど帰ってきたら一枚足りない」
「敷板を貸したら敷板の上で器を滑らせて移動させて傷だらけにされてしまった」
「水盤を貸したら欠けて帰ってきた」
「器を返してきたけれど汚れたまま掃除もせずに持ってきた」
「器を貸していけばな展に出展してもらったら、撤花にすら来なかった」
「器を貸しているのにいつまでたっても返しに来ない」
「貸した器を大切にしないので貸さなかったら、器を貸してもらえないと他所で文句を言っているのが聞こえてきた」
ハッキリ言います。これ器や道具を貸すからこんな事になるんですよね。

みんな口では「借りたものは借りた時よりもきれいにして返しましょう」なんていいますが、そんな事を必ず実践できる人なんて極めてまれです。
知ってか知らずか、悪意が有るか無いか別にして、先に書いたような事になってしまうのが実情なのです。

自分の懐を痛めて手に入れないから、大切にしないし手入れの方法すら身につかない

先に書いたような結果になってしまう理由は、自分の懐を痛めて手に入れていないという事があると思います。

例えば5万円の器を限られたお給料の中から毎月1万円づつ積立をして、購入されたとします。
この器はその人にとって、頑張って手に入れる事が出来た特別な存在ですよね。そうなれば当然、使うたびに綺麗に手入れをして片づけたり大切にされるようになると思います。すると大切にする扱いと手入れの仕方が自然に身につくようになります。

このようにして日頃から自分の器を大切にしたり手入れをちゃんとする習慣がついている人は、所作や行動も正しいものが身につくようになるのです。

器や道具を貸すという行動は、善い人に見られたいという先生の「利己」を満たす行為でしかない

大切なことですからもう一度言います。先生から器を借りてお稽古したりいけばな展に作品展示しているお弟子さんは大成しません。
そしてその根拠はこれまでの光風流の歴史の中で、器を借りていた人の中に大成した人は1人もいないという歴史的事実です。

なので指導者の先生でお弟子さんに器や道具を貸しておられた人は、今すぐ貸すことを止められるようにお勧めします。先生から器を借りていた生徒さんは、いますぐ借りられるのを止められるようにお勧めします。だって貸す側にも借りる側にも、弊害こそあれメリットなんて1つも無いのですから。
ちなみにこの行動の根底にあるのは、生徒さんのためという金言を表に出しながら、その実は先生が生徒さんに善い人に見られたいという「利己」的な考えだけです。

どうしても借りたければ(貸したければ)有償にするべき

とはいえ私も鬼ではありませんので、絶対に何が何でも貸し借りをしてはいけないとは言いません。どうしても貸し借りを行ないたいのであれば、有償にて行なえばよいと思います。

ただしこの場合、条件がいくつかあります。
まず第一にお借りするお礼(費用)は、その器なり道具を今購入するのに必要な金額の2分の1から3分の1程度を目安にしてください。
理由は、その器の価値を金額という誰にでもわかりやすい物差しで知る機会にするという事。そしてあなたがその器を使う事によって貸した人は暫く使うことが出来なくなり、別の器を用意したり買ったりしないといけなくなるという事。器を貸すためには片付けておられる倉庫なり部屋から出してきていただかないといけないという手間をおかけするという事。その器を保管していた保管料。もちろん器をお借りする謝礼。などという意味になります。

そして次に、毛ほどでも傷を入れた場合にはそれと同じ品で弁償を必ず行なってください。
これは貸した方が「いいですよ」と言われるかもしれませんが、人のモノを壊したり傷を入れてしまったりしたらちゃんと謝ったうえに弁償するのは当然の行為だと思います。

最後に、借用するための礼敬を忘れないでください。
お借りするために受け取りに伺う、お返ししに伺う、出来るだけ短期間でお返しする。これはお借りする人への礼敬という事だけではなくお借りした品物への礼敬でもあると思うのです。

最低でもこれだけの事が出来ないのであれば、器や道具の貸し借りは止めておくべきだと私は思います。

貸して不仲になるよりもいつもニコニコ現金払いという言葉もありますが、これはお金だけの事ではないのではないでしょうか。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。