”基本” と聞くと「初心者のもの」とか「レベルが低いモノ」と考えがちですが、それは大間違いです

こんにちは、内藤正風です。
今日は光風流の流誌「光風たより」に掲載する「いけばな講座」のモデル作品写真撮影の立ち合いをしました。

いけばな講座では基本の内容を取り上げて皆さんにご紹介していますので、そんなの簡単な事やん。。。って思われている方もおられるかもしれませんが、実はそんなことないのです。

基本はレベルの低いものではない

基本と聞くと、初心者がお稽古をするものとか、レベルの低い人が学ぶものと思われがちですが、実はそうではありません。
ではなぜ基本を一番最初にお稽古するのかというと、初級中級上級の全てのレベルにわたって大切なものであり、全ての根幹となる存在なのでしっかりと身に着けることが必要だからです。

なので何事によらず、基本をレベルの低いものと感じている間はまだまだ未熟であり、基本の奥深さや大切さを自らで感じるレベルになってきて、はじめて一人前という事が出来るのではないかと思います。

ひらがなの「あ」を、書道のお手本のように綺麗に書くことが出来ますか?

いけばなでいうとわかりにくいかもしれませんので、習字で例えるとわかりやすいのではないかと思います。

”ひらがな” の「あ」という文字があります。たぶん幼稚園くらいの子なら読めるし書けると思います。
そんな幼児から老齢者まで読み書きのできるこの「あ」という文字は日常的に使っていますが、書道の先生がお手本を書かれたらとてもバランスがよくて美しいですよね。
私たちがいくら真似をして書いても太刀打ちできないくらいに綺麗です。

これは線の書き方やとめやはねなどの基本がしっかりと身についているからこそ、綺麗に描くことが出来るのです。
しかし、私たちにとっては真似のできないようなレベルのお手本であっても、書の先生からするとまだまだ不満なところがおありになったりするんです。
すなわち、上級者になるほど基本の大切さや奥深さが解っておられるという事にほかなりません。

基本は自分のレベルによって気づきや学びが違ってくる

基本の生け方は、何度生けても気づきや発見があります。
それは知識や技術という事だけではなく。先人はきっとこういう事を伝えたかったんだろうな。。という事であったり、これこそが変化応用するときに土台となることだな。。という事であったりもします。

すなわちこれって、自分の成長の度合いやレベルによって、見えたり感じたりできるものが変わってくるという事なのだと思います。
それは本の行間を読むという事と同じで、その人の学力や知識レベル、人生経験などによって同じ文書を読んでもその文字から感じる事や学ぶことや気付くことが違ってくるってのと同じだと思います。

まさに世阿弥が言った「花は観手に咲く」なのです。

決まりには必ず理由があるのです

学びの機会はいくらでもあります。
というか、アンテナが立っているかいないかの違いで、学びや気付きを得ることが出来るか出来ないかが変わってきます。

こんなこと私は出来るし良く知っているって思っていると、アンテナが立っていないので何も感じる事すらないでしょう。しかしもっと深く理解しようとか何か得ることが出来るものは無いかと思っていると、アンテナが立ってきてくれるようになります。

ひとつの決まりがあるという事は、その理由が必ずあるのです。
「なぜこの決まりがあるのだろう」という風にその背景を考えたり、「どんな効果を生み出そうと思ってこの決まりが設けられているのだろう」とこの決まりを設定した人の思考を探ってみることが、自分を高みに導いてくれる一番簡単な方法ではないかと私は思っています。

長い歴史の中で今に受け継がれているものに、不必要なものは何一つもないのです。
なぜならば、時代という砥石で磨かれてそれでも擦り切れて無くなってしまわずに今に伝えられているという事は、必要なものだからに他ならないですし、時代の中で磨き上げられて核心となるものしか残っていないのです。

基本はレベルが低いモノなのではなく、逆に全てに関わる存在だという事がお分かりいただけましたでしょうか。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。