「誤魔化す」と、成長する機会まで失ってしまう | いけばなのお稽古で大切にしたいこと

ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。

今日のブログでは、来週末に光風流にて開催する展覧会形式の勉強会「指導展」のモデル作品作りの指導をさせて頂きながら思った、「誤魔化す」という事の功罪について考えてみたいと思います。

知識や技術があるからこそ、誤魔化せてしまう

お稽古を長く続けてゆけば、当然ですが知識も増え技術も身についてきます。これまでの学びや経験を基にして、「こういう時は、こうすればいい」という引き出しも増えてきます。これはとても大切なことです。
いうなれば、長くお稽古を続けてきたからこそ身についた財産です。

ところが、その知識や技術が、時として別の使われ方をすることがあります。「本当は、今の自分にはまだ出来ていない。」「本当は、ここがよく分かっていない。」けれどそれを明らかにして恥をかきたくないから、以前に身につけた知識や技術を使いながら何となく形にして納めてしまう。
これが、私の言う「誤魔化す」ということです。

「その場しのぎ」は、解決ではない

まず最初に申し上げたいのは、誤魔化すという事全てが良くないとは私は考えていません。なぜなら、一定の知識や技術が身についていなければ、誤魔化すことなんて出来ないのですから。なのでその視点でいうならば、成長の証しという事が出来るとも思います。
そんな中で、誤魔化すということには色々な形があり、その一つが、「その場しのぎ」になります。とりあえず今この場を何とかする。何とか形を整える。何とかそれらしく見えるようにする。
もちろん、仕事でも日常生活でも、その場を乗り切らなければならない事はあります。ですから、その場しのぎそのものが、いつでも悪いという話ではありません。
問題は、その場をしのいだことによって、それを「解決した」と思ってしまうことなのです。

本当は解決していないのに、その場を乗り切ったことで、問題が無くなったように思ってしまう。すると、次に同じようなことが起こった時に、また同じ方法でその場をしのぐ。そうやっているうちに、自分自身が成長しないまま、本当の問題がずっと残ったままになってしまうのです。
これ、いけばなのお稽古でも全く同じ事なのです。

誤魔化してしまうと、成長する機会まで失ってしまう

お稽古というのは、上手に作品を作ることだけが目的ではありません。「今の自分には、ここが出来ていない」ということを知ることも、お稽古の大切な意味だと思っています。だって出来ない事を「なぜ出来なかったんだろう?」と考えたり、その課題に取り組んだりすることが出来るのですから。

出来ない事には真正面からがっぷり四つで向き合って、取り組めば良いんです。出来なければ、何度でもやればいいんです。そうすると、昨日まで出来なかったことが、少しずつ出来るようになっていく。
これが「習得」ということなんだと思います。

ところが、出来ていないところを知識や技術で誤魔化してしまうと、出来ないという事から目を背ける事にしかならないのです。
つまり、誤魔化しているのは目の前の作品だけではありません。自分自身の成長する機会まで、誤魔化して失ってしまっているんです。

「知っている」と「出来る」は違う

ここで、もう一つ大切なことがあります。それは、「知っていること」と「出来ること」は違う。ということです。
頭では分かっている。以前に教えてもらったこともある。見たこともある。でも、自分で実際にやってみると出来ない。これは、全然おかしいことではありません。むしろ、お稽古をしていれば当たり前のことです。
だからこそ、何度も繰り返して稽古をするわけです。

実際には出来ていないのに、知っていることを使って何とか形にしてしまう。これでは、本当の意味で身についたことにはなりません。

誤魔化さないから、次の一歩が見えてくる

考えてみれば、誤魔化すというのは、その場では楽なんです。何とか形になりますからね。「まあ、これでいいか」と、自分を納得させることも出来ます。でもそこにあるのは、「成長」ではなく「自己満足」なのです。

本当の成長というのは、自分が出来ていない事を知るところから始まります。だから私は、お稽古をするときには、「上手に見せよう」とするよりも、「今の自分を誤魔化さない」ことの方が大切だと思っています。
出来ないことがある。分からないことがある。それでいいんです。だって出来ているのならば、そもそもお稽古する必要なんてないのですから。

誤魔化さない、その場しのぎをしない、そしてがっぷり四つに取り組む。これが自分が成長するために絶対に外す事が出来ない入口なのです。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。