西宮神社の福男のニュースを見ながら思った、「ハレ」を大切にする事は「文化」を大切にするという事

こんにちは、内藤正風です。

今日は十日戎ですね。ニュースでは西宮神社で3年ぶりに福男選びが行なわれたと放送されていましたし、各地のえべっさんをお祀りしている神社では多くの人出でにぎわっているというニュースも目にしました。
そんな中、「ハレ」の大切さという事についてふと思ったので、今日はそんな事について書きたいと思います。

「ハレ」とは何か

「ハレ」とは、晴れの日の「ハレ」のことです。例えば分かりやすいのは、晴れ着を着る様な機会です。成人式、卒業や入学入社、受賞、お正月みたいな節目の事であったり特別な意味を持つ日という事だと思えばいいと思います。
そして「ハレ」を語るときに欠かせないのが「ケ」です。すなわち日常です。「ハレ」が毎日有ったら特別な日にはならないですよね。だって毎日有るってことはそれは日常という事なのですから。
日常が大半を占めていて、時々特別な日があるという事です。

今日の十日戎も1年に1度1月10日に催されるから特別な機会になるのであって、十日戎が1年365日毎日行われていたらこんなに日本中で盛り上がることは無いと思うのです。

「ハレ」は大層するからこそ特別な日になるのです

さてこの「ハレ」ですが、特別扱いをして大層するからこそ「ハレ」として認識されその役割を果たすことが出来ると私は思っています。
近年は何でも簡素化、簡略化と言われることが多いですが、少なくとも「ハレ」に関しては簡単にしたり日常と同じにしてしまっては「ハレ」の意味がなくなってしまうからです。

この一番わかりやすい例はお正月とクリスマスです。
近年お正月は日常と何も変わらなくなってきました。お店は1月1日からいつもと同じように開いていますし、親兄弟や親戚が一堂に集まることもなく、大掃除も殊更にする事も無くなりました。
その結果は皆さんお感じになられている通り、「正月らしさが無くなった」という状態になっています。
逆にクリスマスは、予約の取れないレストランを1年とか1年半前とかから予約したり、プレゼントをお金を貯めて準備をしたり、オシャレな服を用意したりしてとても沢山の手間や労力をかけているので、年々クリスマスは盛り上がってきています。

「ハレ」とは、お家や地域に伝わる文化を伝承する為の大切な機会

私は「ハレ」とは文化を伝承してゆくとても大切な役割を担っているものだと思っています。
とはいえ文化と一口に言いましても、古くからのモノ、日常的なモノ、人や動物に関連するモノ、社会としてのモノ、新しいモノ、等々もの凄い広範囲を指す言葉になりますので、ここからは日本の伝統的なモノや、小規模な集団(地域、企業、学校、家など)、あるいは一般的に教養とか習慣と呼ばれるような事を念頭に置きながら書いてゆきたいと思います。

先にも書きましたが、私は文化を考えるときに、「ハレ」と「ケ」を抜きにしては考えることはできないと思っています。加えて文化を根付かせるためには長い年月が必要になるとも思っています。
それは企業の「社風」、学校の「校風」、家の「家風」などを考えて頂くとお分かりいただけると思うのですが、この社風や校風や家風は1日ではそんな風に呼ばないですよね。何年というよりも何十年、あるいは何百年という風に積み重ねた時間が長ければ長いほどその裏付けになりますし重みになってきます。

すなわち文化とは、時間の積み重ねの中で繰り返し、良いものが残り定着し習慣化してゆく事によって形作られてゆく存在であるという事が出来ると思うのです。
なので何か新しい文化を根付かせようと思うならば、とにかく長い期間が必要になるという事です。

しかしその反対に文化を無くすのはとても簡単で、「や~めた」でどんなに長い歴史のある文化も無くすことが出来てしまいます。
すなわち、文化は一夜にして無くすことはできますが、文化を作り上げるためには長い時間が必要になるという事です。例えば家風は二代以上続いて初めて「我が家の家風です」といえるものになるように、時間の積み重ねがあってはじめて文化として成立するようになるのです。

時間の積み重ねは、お金を出しても手に入れる事は出来ない

文化の価値とは、いくらお金を摘んでも手に入れる事が出来ない、時間の経過によって積み上げられたものだという事です。

たとえば日本には世界に誇る技術が沢山あります。しかしこれらは研究費や人件費などお金を積み上げる事によって、いくらでも奪い取ることが出来ます。あるいは知識や技術を盗み取ることもできます。
しかし日本の2000年以上の時間を積み上げたことによって培われている文化は、いくらお金を積み上げても奪い取ることはできませんし、盗み取ることも出来ないのです。

という事で今日は、「ハレ」を大切にするという事について、思った事を徒然に書いてみました。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。