美しいのは、花や枝だけではありません | いけばなで感じる「間」と「侘び寂び」
ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。
突然ですが、皆さんは「間(ま)」という言葉をご存じですよね。昨日は光風流本部いけばな教室のお稽古日だったのですが、教室に来られている生徒さんに「空間」についてお話をさせて頂きました。
いけばなにおいて「空間」すなわち「間(ま)」は欠かせない存在です。そして、いけばなには「侘び寂び」という日本人ならではの美意識も深く関わっています。
ということで今日は、そんな日本人ならではの美意識といけばなについて、ブログを書きたいと思います。
何もないところにも、美しさが存在しています
いけばなをご覧になるとき、皆さんはどこに目を向けられますか。綺麗に咲いた花でしょうか。それとも、伸びやかな枝ぶりや、葉の姿でしょうか。もちろん、それらは作品を構成する大切な要素です。
しかし、いけばなを鑑賞するときに、ぜひ注目していただきたいものがあります。それは、花と花の間、枝と枝の間にある「何もない空間」です。
いけばなでは、花や枝をどこに配置するのかということと同じくらい、どこに空間を残すのかということが大切になります。
例えば、花器いっぱいに花を詰め込んだら、確かに華やかな作品になるでしょう。しかし、枝と枝の間に空間があるからこそ、一つひとつの枝の動きが際立ったり、花の表情が引き立ったりするのです。
何もないから、何も存在していないのではありません。その何もない空間があることによって、花や枝が生きてくる。これが、いけばなにおける「間」の面白さだと思います。
「間」は、単なる隙間ではありません
ここで大切なのは、「間」と「隙間」は同じではないということです。
花と花の間が空いていれば、それだけで美しいというわけではありません。枝の方向や長さ、花の位置、そして作品全体の釣り合い。そうしたものが関わり合うことで、初めて意味のある空間がそこに存在してくるのです。これは、人と人との会話にも似ていますよね。
言葉を途切れることなく話し続ければよいというものではありません。時には言葉を止め、相手の反応を待つ時間があるからこそ、伝わるものがあります。よく関西人が話をしていると漫才みたいだと言われたりしますが、これも内容が面白いという事だけではなく、「間」が大きな効果を発揮しているのです。
音楽でも、音が鳴っていない時間があるからこそ、次の音が生きてくるのです。
いけばなも同じです。花や枝を生けることだけでなく、生けないところをどう考えるのか。そこに、いけばなの奥深さがあるのです。
完全に整っていることだけが、美しいとは限りません
もう一つ、いけばなと深く関わっていると感じるのが、「侘び寂び」という美意識です。例えば、左右が完全に対称で、どこから見ても整っているものには、それなりの美しさがあります。しかし、日本の美意識には、そうした整った姿だけではなく、少し不揃いであったり、時の経過を感じさせたりするものの中にも、美しさを見いだす感覚があります。
曲がった枝、虫に食われた葉、少し傷のある花器。そうしたものは、見方によっては欠点と捉えられるかもしれません。しかし、曲がった枝には、その枝が育ってきた時間が表れています。虫に食われた葉にも、自然の中で生きてきた姿があります。それらを単に「形が悪い」「傷がある」として切り捨ててしまうのは、とても勿体ない事に他なりません。
自然のものは、人間が定規で線を引いたように、全てが真っ直ぐで整っているわけではありません。だからこそ面白いし、そこにしかない美しさが宿っているのです。
いけばなの美しさは、日常生活にも通じています
考えてみれば、私たちの日常生活も同じではないでしょうか。予定を隙間なく詰め込んで、スケジュールに忙殺されるよりも、少し余裕がある方が、思いがけない出会いや気付きが生まれることがあります。
人間だって、全てが完璧に整っているわけではありません。それぞれに得意なこともあれば、苦手なこともある。考え方や性格にも違いがあります。そうした違いがあるからこそ、人と人との関わりには面白さが生まれるのだと思います。
何もない空間に意味を見いだす「間」。整いきっていないものや、時の経過の中にも美しさを見いだす「侘び寂び」。いけばなは、花を美しく生ける技術を学ぶだけではなく、こうした物事の見方や考え方に触れることが出来るものでもあると思っています。
明日から兵庫県加古川市において「兵庫県いけばな展(加古川市会場)」を開催いたします。会場にお越しになりいけばなの作品をご覧になるときには、花や枝だけでなく、その間にある「空間」にも目を向けてみてください。そして、少し曲がった枝や、不揃いな葉にも注目してみてください。
整ったものだけを見ていては気付く事が出来ない美しさを、発見していただけるのではないかと思います。
内藤正風PROFILE

-
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。
最新の投稿
いけばな作品2026年10月30日美しいのは、花や枝だけではありません | いけばなで感じる「間」と「侘び寂び」
・いけばなから学ぶビジネス2026年10月29日いけばなは、花を生ける技術だけではない | 人との会話から学ぶ「華道」の本質
いけばな展2026年10月28日いけばな展って実は「お祭り」なんです | 作品を見るだけじゃない、楽しみ方のお話
いけばな展2026年10月27日作品の大きさによって、注ぐ力は変わらない | いけばな展で私が大切にしていること

