やっつけ仕事は時間を浪費し、信頼を失い、学びを放棄する行為に他ならないという事

ごきげんよう、こんにちは、こんばんは、内藤正風です。

7月5日(土)6日(日)に開催する「光風流いけばな展」にむけて、連日作品作りやデモンストレーションのお稽古が続いています。あと20日を切りましたので、最後の追い込み真っ最中です。

そんな中で、いけばなの作品作りが「やっつけ仕事」になってしまっては絶対に良い結果を得る事はできないという事について昨日の教室の中で思ったので、今日はそんなことについてブログを書きたいと思います。

「やっつけ仕事」が、いけばなにおいていけない理由

いけばなは、ただ花を生けるだけの作業ではありません。自然への敬意、美への追求、そして己の心を映し出す作業でもあります。だからこそ、心を込めず「やっつけ仕事」で済ませようとする姿勢は、作品の完成度だけでなく、学ぶ姿勢そのものを損ないます。

子供の頃に「書き取り帳」ってありましたよね。同じ文字をマス目に書き込んで1頁いっぱいにするってあれです。書き取り帳の宿題の時に、とにかくマス目を早く埋めて仕上げて提出したらよく注意されました。「ちゃんと一文字ずつ意識しながら書かないと、覚えられないよ」と。
まさにそれと同じ事だと思うので、いけばなの作品作りにおける「やっつけ仕事」が良くない理由について改めて考えてみました。

自らの価値を貶めてしまっている

いけばなは、自然の恵みである花や枝を素材にして作品を作り上げる行為です。なので、やっつけ仕事で花を粗雑に扱うという事は、命を軽んじている行為になります。
たとえば作品作りやお稽古のために準備した花材を、表裏や枝ぶりを適当に扱い生ける行為は、花の美しさを引き出すどころかその価値を自ら貶めてしまっています。
そんな中から、作品のイメージを確立したり、もっと良い作品にするためにはどうしたらよいかという作業を出来るはずがありません。

自己成長を妨げる

いけばなは技術と経験の積み重ねです。1回1回のお稽古に丁寧に取り組むことで、構成力や空間感覚、美意識が磨かれていきます。
なのにやっつけ仕事でお花を生けてしまうという事は、試行錯誤をせず、工夫をしたり気付いたり出来る機会を自ら放棄してしまっているという事に外なりません。
そんな状態では、上達の速度は鈍り、見る人に感動を与える作品が生まれるはず等ありませんし、自分なりに工夫することを放棄していては、真の成長など絶対に望めないです。

自分の思いを大切にし心を込めて作品と向き合わなければ、観る人に何も伝わらない

いけばなは自己表現であるという事が出来ます。花を使って作り上げた作品を通じて、今の自分の内面を映し出すものです。なのにやっつけ仕事で作品を扱ってしまっては、雑な印象を与え、観る人の心には何も残りません。逆に丁寧に生けられた作品からは、たとえ未熟であっても作者の心や思いを感じることが出来ます。

これは子供のお遊戯会を見に行ったときに、大人が心を震わせるのと同じです。幼稚園児の演劇など技術的にはつたないものでしかありません。がしかし、一生懸命に練習をし、本番で力の限り演じていることが伝わってくるから、大人が笑ったり涙したりするのです。

知識と技術は大切だが、敬意や創意工夫の伴わない作品は自分自身の成長を得る事はできない

いけばなは「技」「知」と「心」が伴って初めて成り立つ存在だと思います。なのに「やっつけ仕事」での作品作りは、その全てをないがしろにする行為に他ならないと思います。
もし、いけばな展の作品作りや日々のお稽古に「とりあえず」や「適当に」で臨んでいるならば、それは折角そこにある自分自身の成長の機会を自ら捨てていることにほかなりません。

ひとつひとつの作品に真心を込めて、丁寧に向き合う。それが、いけばなに携わる者として忘れてはならない姿勢だと思います。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。