スーツの襟にある小さな穴は、昔は花を挿すためのものだった | 暮らしに残る花の文化
ごきげんよう、こんにちは、そしてこんばんは、内藤正風です。
先日、あるお祝いの会において、ヴァイオリンとピアノの生演奏に合わせてデモンストレーションを行なったのですが、舞台の上で行いますから「舞台映えする様にどうしようかなぁ」と考えているときに、「あっ、襟に花でも挿すかなぁ」って一瞬思ったのですが、舞台で間口2m、高さ2mくらいの花を生けるのですから、そんな花の前で花一輪を襟に挿しても引き立たないなと思って却下し、結局、当日着るシャツを鮮やかなグリーンのものにして、舞台映えするようにしたのです。
という事で今日は、スーツの襟についている穴についてブログを書きたいと思います。
スーツの襟についている「穴」の名称をご存じですか
スーツの襟についている穴って、この写真の小さな穴です。
会社のバッチを付けている方も多いと思いますし、私も普段はここに光風流のバッチを付けています。ちなみにこの穴は「フラワーホール」と言い、そもそもの用途は、バッチを付けるためのものではないんです。
フラワーホールという名前ですから、「花と何か関係があるのかな」と思われる方もおられると思います。
はい、その通りなんです。昔は、この襟の穴に花を挿していたことから「フラワーホール」と呼ばれるようになったと言われています。
昔はプロポーズにも花を使っていた
結婚式などで、新郎がスーツの襟に花を飾っている姿を見ることがありますよね。私たちはそれを見ても、「結婚式だから襟に花を飾っているんだな」と思って終わりです。
でも、よく考えてみると面白いと思いませんか。今では「ちょっとお洒落をするための飾り」のように見える襟の花が、実は昔から続いてきたものだという事を。
ちなみにこのフラワーホールが、昔から存在しているという事を証明する話があります。
昔は男性が女性にプロポーズをするときに、一輪の花を渡し、女性がその花をフラワーホールに挿すことで、承諾の意思を示したという話があります。今の私たちからすると、なんとも「粋」な話ですよね。
「好きです」「結婚してください」と言葉で伝えるのももちろん良いのですが、一輪の花を渡して、その花を胸に挿してもらう。花を使って気持ちを伝えあう。
こういう文化が昔からあったということを知ると、花って単に「綺麗だから飾るもの」ではなかったんだなぁと思いますし、いけばなに携わっていてよかったなぁと改めて感じます。
フラワーホールには、今も花を留める仕組みがある
そして、もう一つ面白いことがあります。きちんと仕立てられたスーツでは、このフラワーホールの襟の裏側に、「チーループ」と呼ばれる輪が付いています。
これも単なる飾りではありません。フラワーホールに挿した花の茎を、この輪に通して安定させるためのものなのです。
仕付け糸じゃないですよ。(笑)
つまり、スーツの襟にある小さな穴と、その裏側にある小さな輪。普段はほとんど気にすることもありませんが、そこには「胸に花を飾る」という文化の名残がちゃんと残っているのです。
花の文化は、意外なところに残っている
スーツを着ている人を見ても、「この人は花を飾るための穴を胸に付けている」と考える人は、今ではほとんどいないと思います。でも、その小さな穴の名前は「フラワーホール」なんです。そして、そのための仕組みまでスーツの中に残っている。
そう考えると、私たちの身の回りには、昔の花の文化が意外なところに残っていたりするのです。
いけばなをしていると、花を飾る場所や花を楽しむ方法について色々と考える機会があります。でも、花を飾る文化というのは、いけばなの世界だけに限られたものではありません。
服にも花がある。結婚式にも花がある。人の気持ちを伝えるところにも花がある。そう考えると、花というのは昔から私たちの暮らしの中に、とても身近な存在としてあったし、節目節目において大きな役割を果たしてきているのです。
スーツの襟に今も残っている小さな「フラワーホール」を見ていると、昔の人たちが花をどんな風に楽しみ、どんな風に暮らしの中に取り入れていたのか。そんなことまで想像することが出来て、なんだかちょっと楽しくなってきませんか。
内藤正風PROFILE

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平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。






