心を込めて作り上げた ”いけばな展の作品” を「展覧会に行けないから後で写真で見せてね」と言われると、とても残念な気持ちになります

ごきげんよう、こんにちは、こんばんは、内藤正風です。

昨日幕を閉じた「兵庫県いけばな展」で、年内に私が出瓶するいけばな展は全て終了となりました。とはいえ、作品提供をはじめとして私の作品を展示する機会はまだまだ沢山ありますので、作品を展示する ”いけばな展” という機会が年内には無いというだけの事なんですけどね。

いけばな展の作品を「後で写真で見せてね」と言われると、”イラっ” とする

いきなり強い言葉のタイトルでスミマセン。けれどやっぱり言い切りたかったのでこのタイトルにしました。ちなみにこんな風に私が感じる理由はいくつかあります。

まずその理由の1つ目は、「いけばな作品は立体造形物だ」という事です。
作品には上下左右だけではなく手前や向うがあります。したがって、そこにある枝や花や葉の働きは「3D(立体・三次元)」なのです。そんな「3D」の作品を写真という「2D」に落とし込んだとたんに、その立体感によって生み出されている魅力は皆無となり、作品としての価値はほとんどなくなってしまいます。(記録としての価値はあります。)
なのに自分が一生懸命に作り上げた作品が、正しく表現されていないメディアを通じて他の人の目に触れるというのは、私にとってあまり気持ちの良いものではないのです。

そして理由の2つ目は、「作品の大きさによって変わる迫力や魅力」です。
いけばな作品の魅力には、その作品の大きさも大きく関係しています。小さな作品から感じる可愛さ、大きな作品から感じる圧倒的な迫力、これらは写真からは絶対に伝わりません。だってスマホで見たら30cmの作品も3mの作品も、おなじ画面の大きさでしか見えないのですから。

最後に3つ目の理由として、これが私にとっては理由として一番大きなものになりますが、「作者が心を込めて作り上げた作品なので、心を込めて見てもらいたい」と思うからです。
いけばな作品は作者の分身です。作者の心や人生をかけて生み出されたものです。そんな一生懸命に作り上げ展示をしている作品を、「展覧会行けないからまた写真で見せてね」なんて軽々しい言葉で片づけて頂きたくないのです。
作者が一生懸命に心を込めて作り上げた作品なんですから、ご覧いただく方にも会場に足を運んで心を込めてご覧頂きたいと私は思うのです。

とはいえ今の時代ですからInstagramやホームページ等で、いけばな展で展示した作品は全て公開していますし、皆さんに気軽に手軽に見ていただくことができる様にしています。なので皆さんに ”見せない!” って事ではないのですが、「いけばな展に行けないから、また後で写真で見せてね」と言われると、いまだに ”イラっ” としてしまうのです。(笑)

いけばな展の作品は会場でご覧いただいたときに、一番魅力が伝わるようになっています

と、こんな風に書いていますが、私は「全てのいけばな作品を生で見なければならない」と言っているのではありません。
光風流でいうならば、流誌「光風たより」に掲載されている作品や「カレンダー」の作品などは、写真でご覧いただき楽しんで頂くために制作しています。ここ物凄く大きなポイントです。
つまり光風たよりやカレンダーの作品は、写真で皆様にご覧いただくことを前提に作り上げた作品です。つまり写真で見たときに、その作品の魅力が100%伝わるように撮影されているものであるという事なのです。

がしかい、いけばな展などで展示している作品は、その会場で直接作品を目で見て楽しんで頂く事を前提に制作しています。なのでこのいけばな展の会場で展示してある作品の100%の魅力は、たとえプロのカメラマンが最高峰の技術と機材を用いてどんなに綺麗に撮影された写真であっても、会場でご覧いただいたものには及ばないという事です。

作者への敬意は、会場で作品をご覧いただく事だと思います

私は流派は違えども、作品を生み出すときの生みの苦しみや、作品を作り上げる過程での苦心や苦労、そういうものは同じだと思うのです。
展示されている作品をご覧になられて、そこに好き嫌いがあるのは仕方ないと思います。だって人間は嗜好の生き物なのですから。自然的手法の好きな方、造形的な表現が好きな方、シックなものが好きな方や派手なものを好まれる方、これらは正解でも間違いでもありません。単なる好みです。
しかし作者の作品に取り組む姿勢や労力に対する敬意は、見てくださる方にも持っていただきたいなぁと思うのです。

会場に行って作品を見て、これは私の好みではないなぁ。。とかこれは好き。と思っていただくのは大いに結構だと思います。だって会場に足を運んで心を込めて見ていただいた結果なのですから。
しかしながら「あとで写真で見せてね。。」は、全ての作者が程度の大小はあるにしろ残念な気持ちになっておられることを知っていただきたいと思いブログにしてみました。

内藤正風PROFILE

内藤 正風
内藤 正風
平成5年(1993年)、光風流二世家元を継承。
お花を生けるという事は、幸せを生み出すという事。あなたの生活に幸せな物語を生み出すお手伝いをする、これが「いけばな」です。
光風流の伝承を大切にしながら日々移り変わる環境や価値観に合わせ、生活の中のチョットした空間に手軽に飾る事が出来る「小品花」や、「いけばな」を誰でもが気軽に楽しむ事が出来る機会として、最近ではFacebookにおいて「トイレのお花仲間」というアルバムを立ち上げ、情報発信をしています。ここには未経験の皆さんを中心に多くの方が参加され、それぞれ思い思いに一輪一枝を挿し気軽にお花を楽しまれて大きな盛り上がりをみせており、多くの方から注目を浴びています。
いけばな指導や展覧会の開催だけにとどまらず、結婚式やパーティー会場のお花、コンサートなどの舞台装飾、他分野とのコラボレーション、外国の方へのいけばなの普及、講演など、多方面にわたり活動し多くの人に喜ばれています。